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Sir Kay~Brother Of King~・短編

※こちらは「Sir Kay~Brother Of King~」の短編、子供の頃のケイとアーサーのお話です。



「流れ星」



 おれの名前は、ケイ。由緒正しき騎士、エクターの息子だ。
 父上はすっごく強くて礼節を重んじる、正に騎士の鑑だって皆から言われているほど素晴らしい方だ。おれもいつか父上みたいな立派な騎士になるんだ。
 母上は、おれがもっと小さい時に病で亡くなった。額のサークレットがとてもよく似合っていて、それで優しくて暖かい人だったのを覚えている。怒った時は父上より恐かったことも。
 でも、一番覚えているのは歌だ。母上は歌がすごく上手で、おれにも教えてくれた。だから、おれはちょっとだけ歌が得意なんだ。教えてくれた歌の中でも、特に子守歌がお気に入りで、アーサーなんか毎晩聴かないと寝れないくらい……。ああ、そういえばあいつのこと忘れてた。
 父上と母上と、そしてもう一人おれには家族がいる。弟のアーサーだ。
 こいつが本当邪魔くさいヤツなんだ。雛鳥が親鳥にするみたいに、いつも後ろからおれを追いかけてくるわ(この場合、おれは親鳥か?)、夜中は暗闇が恐いからってビイビイ泣くわ、見てるだけでイライラしてくる。特に夜中は母上の子守歌を聴いてでないと寝れないなんて、まるで赤ん坊じゃん。
 しかも、母上が亡くなった後は、おれが子守歌を聴かせる役になっちまった。母上の子守歌を覚えているのはおれだけだから。けど、ほぼ毎晩だぞ?やってらんねぇよな。しかもやんねぇと、あいつ部屋にまで来て泣きにくるから面倒くさくてたまらない。まあ、結局ここ最近まで歌ってやってたけど。そうしないと泣きっぱなしだから、仕方なくな。
 おかげで朝も昼も夜も、ずっとあいつと一緒。正直うんざりだ。でも、あいつはそんなおれの気持ちなんてお構いなしにひっついてくる。何でもおれとやりたがる。あの時もそうだったんだ。
 暑い夏の夜、弟は突然こんな事を言い出してきた。
「兄上、一緒に流れ星を探して下さいませんか」
 こいつが何の脈路もなく、突拍子もないことを言ってくるのは、よくあることだからおれは驚かなかった。呆れはしたけど。
「は?何でおれが、お前とそんなことしなくちゃなんないんだよ」
 面倒くさいのを隠さないで、おれは言った。もっとも、こいつはそんなことには気付かないけど。おめでたいヤツだ、本当。
「流れ星を大好きな人と二人で見ると、その二人はずーっと一緒にいられるんですよ」
 そんな話は、初めて聞いた。ていうか、本当にあるのか。何か、怪しい……。
「…それ、誰から聞いた?」
「ルーカン殿が教えてくださいました」
 やっぱり、あいつだったか……。いつも勝手な話を作っては、こいつに吹き込むんだよなあ。その度におれが面倒なことに巻き込まれるのをわかって言ってるに違いねぇ。
 だけど、今回はそうはいくもんか。
「見たきゃ他のやつと見ろよ。別におれとじゃなくてもいいだろうが」
 キッパリ言って、おれは背中を向ける。そのまま自分の部屋に戻ろうとしたけど、グイと後ろに引っ張られてしまった。
「ダメです。兄上と二人じゃなきゃ、意味がないんです」
 見ると、アーサーが服の裾を掴んで必死な顔をしている。しかも、何だか訳の分かんねぇ事ほざいてるし。本当にイライラするヤツだな。
「何でだよ?」
 服から手を離させようとしたけど、アーサーも強く掴んでいて、なかなか外せない。今回はやけに強情だ。一体、何をそんなにこだわっているのか不思議でならない。
 すると、アーサーはおれの疑問に答えた。それはもうあっさりと。
「兄上が大好きだからです」
 おれは何も言えなくなった。どうしていつもこいつは、こんなことを恥ずかしがりもせず言えるのだろう。おれだったら絶対に出来ない、というより絶対にしない。
 アーサーは上目遣いでおれを見ている。その表情は、他のヤツならイチコロだったろうが、おれには通用しない。…しないったら、絶対にしないぞ。
 そんな事を頭の中で繰り返した、数分後。
 何だかんだで結局、おれはアーサーの部屋で一晩星空を眺めるハメとなってしまった。…別に根負けしたとかそんなんじゃないからな!



 満天の星空を見上げて、もうどれくらい経っただろう。ここのところ蒸し暑い日が続いていたけど、今日はわりと涼しいから起きてても辛くないのが幸いだった。これが冬だったら寒くてしょうがなかっただろうな。季節が夏で本当に良かったと思う。
 だけど、心地良い涼しさが仇となることもあった。そう、睡魔が襲ってくるのだ。
「兄上、兄上。寝ちゃダメですよ、起きて下さい」
 突然揺さぶられてハッとする。知らない間に眠っちまったようだ。アーサーに起こされたものの、段々面倒くさくなってきていたせいか、眠気は消えない。
「…んなこと言ったって、全然流れてこねぇじゃねぇか。ここで寝てるから、その間にお前だけ見てろよ」
「ダメです。一人が寝てしまった状態で、一人だけが流れ星を見てしまうと、その二人は離ればなれになってしまうんです。お願いですから、寝ないで下さい」  …そんな事まで付け加えたのか、ルーカンのヤツ。しかも、こいつはそれ信じているみたいだし。相変わらず騙されやすい。
 仕方がないので、再度星空を見上げる。が、どんなに綺麗でも、ずっと見ていたら正直飽きてしまう。おれ、何でこんなことしてるんだろう……。
 何も変わらないまま、時間だけが過ぎていった。
「見つかりませんね……」
 アーサーも流石に落ち込んできたみたいだ。声のトーンがさっきより沈んでいる。
「当たり前だろ、流れ星だぞ。一晩中起きてたって見つからないことの方が多い」
 だから、もう諦めてくれ。おれは、そう願った。でもこいつの性格上、無理だとも思っていた。
「…でも、今日こそは絶対に見つけます」
 やっぱりな。こいつは、一度決めたらテコでも動かなくなる。変なところ、意固地なんだよな。どうやっても今日こそは見つけるつもり……ん?待てよ?
「今日こそ…って、まさか前にも挑戦してたのかよ」
「はい」
 おれが聞くと、アーサーはあっさりと頷いた。こんな馬鹿な事を今夜以外にもやっていたなんて、驚くというより、正直呆れる。
「最初は、流れ星にお願いをすると叶うって教えてもらったんです。でも何日空を見上げても見つけることが出来なくて。どうしたらいいかと相談したところ、今度は『二人で見たら確率が上がる。それに一緒に見たら、二人はずっと一緒にいられる』って教えてもらって」
 それって、ただ単に前の話に付け加えただけじゃねぇか。しかも「二人で」なんて言ったら、こいつが誰を選ぶかわかってて、そんな話したんだ、絶対に。…てことは、おれ、あいつにまんまと嵌められたってことか?そう考えたら、腹が立ってきた。
「おれはごめんだぜ。あいつの作り話のせいで寝不足になんかなりたくない」
 流れ星を朝まで探そうとしているアーサーの意向をバッサリと切り捨てる。本人は悲しそうな顔をしたけど、全然構わない。
「大体、流れ星を見たからってずっと一緒にいられるわけないだろ。兄弟ってのは大人になったら、離れていくのが普通だ」
「そんなことないです。ずっと一緒にいる兄弟だっていますよ」
 正論を言えば半ば納得すると思ったけど、意外にもアーサーが反論を返してきた。しかもちょっとムッとしている。
 いや、でもそれはちょっと問題だろ。男同士の兄弟がじじいになっても二人でいるのって。明らかに「寒い」という一言しか思い浮かばない。
「いねぇよ。おれもお前もいつかちゃんとした騎士になるんだ。そうしたら結婚してお互い新しい家族を作れって、父上が言ってただろ」
「だったら、ぼくは結婚なんかしません」
「変な我侭言うなよ……」
 キッパリと言い切って顔を背けるアーサーに、もう呆れの感情も湧き上がらなかった。
 それぞれ妻をめとって、子供をもうけて、時々会ったときにお互いの子供に剣を教えてやったり、遊んでやったり、二人になったら酒を飲んで昔語りをする。それこそ兄弟のあるべき姿じゃないか、とおれは思っている。全部父上の受け売りだけど。でも、こいつは違うみたいだ。
 普段は素直に言うことを聞くくせに、何故かこの話には頷こうとしない。何をそんなにこだわる必要があるっていうんだ。
 本当にこいつの考えることは、全然わからない。兄弟というのは、他人同士よりも相手のことがわかるらしいけど、おれとこいつは当てはまらないな。言葉に出さなくても、いつもお互いのことがわかってるルーカンと弟のベディヴィア。あいつらこそ兄弟といえる間柄なんだろう。
 もっとも、それが当然だ。だって、おれたちは……。
「父上と母上と…兄上以外の人と家族になんかなれません」
 その小さいつぶやきに、おれの思考は一気にそっちへ傾いて横を向いた。
 つぶやいたアーサーは、こっちを見ようとしない。窓の外をじっと見つめるその目は、強く細められてる。何だか、泣きたいのを堪えてるみたいだ。
 それにしても、妙なつぶやきだったな。ひょっとして、こいつ、離れたらもう家族じゃなくなるなんて思ってるのか?だから作り話だってわかってて、こんな下らないことやってるって。どうしたら、そういう勘違いが出来るんだよ。純粋な上に馬鹿だからか。
 ……でも、そういえば、おれも似たこと考えた時があったっけ。おれの時は、母上もまだ生きてて、今のこいつよりずっとちっちゃかったけど。泣いて母上を困らせたこともあったよなあ。あくまでも、ちっちゃい時の話だけどな。
 ふと、おれはそのとき母上が言ってたことを思い出した。
「……ずっと一緒にいるから、家族なんじゃねぇよ」
 星空を見上げて、ぽつぽつと、あの時のおれみたいに悲しむ隣の弟に、おれの言葉で語る。
「離れてても、心が繋がっている。家族ってそういうもんだろ……って」
 目線を空から下ろすと、そこには窓の縁に置いた腕に顔を埋めながら寝息を立てているアーサーの姿があった。ちっともこっちの話を聞いていなかったと知って、おれは最初唖然とし、次に気取って語った自分が恥ずかしくなり、最後はこいつに腹を立てた。
「…お前が寝るなっつったんだろうが」
 一発ぶん殴って起こしてやろうかと思って、拳を振り上げる。だけど、あまりにも無邪気に眠る、こいつの寝顔を見てたら、そんなことをするのも馬鹿馬鹿しくなった。拳を下ろして、大きい溜息を吐く。
 するとアーサーがクシュン、とクシャミをするのが聞こえた。夏とはいえ、夜はちょっと冷えるかもしれないな。ベッドから毛布を持ってきて、アーサーの肩に掛けると、その温もりが気持ちいいのか、寝顔が笑い顔になる。こいつは起きてる時もよく笑うけど、こうして寝てる時も笑ってることが多い。早い話、起きてても寝てても幸せなヤツなんだってことだ。いつもぶすっとしてるおれとは大違い……って、寝顔は知らないけど。
 完全にグッスリ寝ているこいつを、おれはぼんやりと見ながら、さっきの事を考えていた。兄弟は、いつかは離れていく。これは本当の事だ。でも、おれとこいつはそれが理由で離れるんじゃないのかもしれないとも思ってた。そもそも、理由なんてなくても離れることだって、考えられる。
 おれとこいつは、血が繋がっていないからだ。こいつはそのこと知らないけど。
 血が繋がっている者同士でさえ、いつかは離れていくんだ。血が繋がらないおれたちは、どうやったって離れるかもしれない。例えば、こいつの本当の親が出てきたり、とかさ。おれや父上、母上以外とは家族になれないって言ってたけど、実際別に家族がいるんだよな、こいつには。
 もし、そんな時が来たとしたら、父上はどうなさるんだろう。おれは、どうするんだろう。そして、こいつはどちらへ行くんだろう。そんなの、何だかんだつったって、まだガキのおれにはわからないけど。
 そんなことを考えていたら、何かこいつの顔を見てるのが急に苦しくなってきた。おれは気分をリラックスさせるために、星空を見上げた。
 瞬間。
「あ……!」
 一筋の眩い光が流れていくのが目に入って、おれは思わず声を上げる。それはあまりにも一瞬の出来事で、何も考えられなかった。
 横からムニャムニャ、と意味不明の言葉を呟く声が聞こえて、ようやく茫然自失から抜け出す。慌てて振り向くと、アーサーは変わらず、ぐっすりと眠っていた。その顔を見ながら、さっきの話を思い出す。
『流れ星を大好きな人と二人で見ると、その二人はずーっと一緒にいられるんですよ』
 そう言って、こいつはおれに流れ星探索を願い出てきた。そして、その後、夜空を見上げながら、もうひとつ言った。
『一人が寝てしまった状態で、一人だけが流れ星を見てしまうと、その二人は離ればなれになってしまうんです』
 一人が寝て、起きてる一人が流れ星を見る……。つまり、今の状況のことじゃないか。
 いや、待て。あんなのはルーカンの単なる作り話じゃねぇか。本当にそんな謂われがあるんじゃない。そんなのはわかってる筈なのに、何動揺してんだよ、おれは。
 第一、流れ星を見ようが見まいが、離れるのは決まっているんだ。だから、いつか離れる時が来たとしても、それは見たせいなんかじゃない。

 それなのに、地に落ちていく星が頭から離れない……。
 何で、こんなにも不安な気持ちでいっぱいになるんだろうか……。

 スヤスヤと寝息を立てながら眠るアーサーを、おれはただ見つめていた。もう星空を見上げる気にはなれない。また流れ星を見てしまうかもしれなかったから。
 その後、おれが流れ星を見たことを、言うことはなかった。



あとがき:
オリジナル小説「Sir Kay~Brother Of King~」の番外編をお送りしました。いかがだったでしょうか?タイトルはネット小説ランキングの「夏のお題100」からお借りしました。一応、お話の設定も夏にしたのですが、あまり意味がなかった気がしないでもないですね(苦笑)。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

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[ 2006/08/05 23:58 ] オリジナル小説短編 | TB(0) | CM(0)
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Author:春菜
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2006年5月16日開設

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