スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-)

Sir Kay~Brother Of King~外伝 <4>・前編

……ま、間に合った……。
今度こそ間に合わないと思ったよ。
ギリギリだったので、現在息切れ状態。
これ以上は何も書けない……。
確認する暇もないので、後で修正するかもしれません。



   外伝「ルグス遠征」<4>・前編



 夜が明けると、アーサー達はルグスの騎士・ディナダン案内役に彼の同胞であり、文書の送り主であるトリスタンが昔なじみの女性を救うために向かった谷へと彼が乗ってきた車で向かった。
 昨夜の話し合いの末、ディナダンと共に行くのはアーサー、ケイ、ベディヴィアの三人となった。トリスタンが向かった谷には巨人がいる。それを考えれば、本来なら腕の立つランスロットとガウェインをアーサーの傍に置くべきなのだろうが、王が不在になるキャンプにはランスロットの冷静さとガウェインの熱い気性どちらも必要だ。
 ベディヴィアはディナダンと顔見知りであるし、二人には及ばないが片腕ながら剣の腕は上々。近衛隊長としてアーサーの護衛の役目をしっかり果たしてくれるだろうという全員一致で判断した。
 ケイも共に行くことになったのは、アーサーの命……というよりも希望だった。慣れない土地ではケイの何事にも動じない心構えは必要となる。それが理由らしいが、彼はとんだ勘違いをしているとケイは思った。自分は何事にも動じていないのではない。単に焦りを表に出さないだけだ。長く兄弟として過ごしてきたが、どうもこの主であり弟は自分を過大評価したがる。尤もいちいち否定するのも面倒だし、アーサーが言うことで周囲にもそう思わせることが出来るならそれはそれで構わないだろう。
 気がかりなのは、ケイが来ることにディナダンが快諾したことだ。彼が妙に自分を慕っているのをその視線や態度で感じるが、何故なのかは全く分からない。
 ディナダンという男はじつに不可思議な男だ。出会って間もないというのにケイやベディヴィアはおろかアーサーにさえ屈託なく話しかけてくる。それがこちらに対する質問であるならば、情報を聞き出そうとする策だと疑えるのだが、彼が語るのは自分のこと、自分の国のことばかり。
 如何に自分の国が素晴らしいか。かつての皇帝がどれだけ尊敬すべき人物であったか。自分達は主を、そして国を取り戻すために戦っている。ルグスに平和を取り戻すことは、ログレスや他の国にも必ず良い影響を与えるだろう。だから、自分達に協力をしてほしい、と。
 アーサーはその言葉に強い感銘を受けていたようだ。ベディヴィアは相変わらずの無表情のままだったが、そこに微妙な柔らかさが含まれていたのを感じたのは、知人であるためか。
 その中でケイだけがディナダンの言葉を聞けば聞くほどますます疑いの目を向けてしまっていた。そもそも彼が自分を信じて付いてきたという話自体が嘘なのだから。奇妙な道化との一件のせいでケイはディナダンとは会えなかったのだ。なのに彼は自分と出会い、信じて付いてきたのだとアーサー達に説明した。何故そのような嘘をつくのか皆目見当もつかない。
 出立の前に恥を承知で事実を告げようとしたのだが、こちらの様子に気付いたのだろうベディヴィアが止めに入ったために仕方なくまず彼だけに話すとこう言った。曰くディナダンは自分とルーカンとは顔見知りであり、意味のない嘘をつく男ではないことを自分達は知っている。彼がそう言うというのは何か考えがあってのこと。アーサー達には黙っていた方が良い。どうせ言ったところで恥を晒すだけなのだから、と。
 最後の部分には釈然としなかったが、確かにベディヴィアの方がディナダンのことをよく知っている。恐らくそれが一番良い方法なのだろうと納得はしたものの、それで疑念が解消されたわけではなく、今もこうして時折視線を向けてしまうわけだったのだが。

 途中、立ち寄った谷に最も近い村で巨人について話を聞いた。
 その巨人はここ数ヶ月の間に姿を見せるようになり、現れる度に嵐の如く暴れまくっていくのだとか。なるほどその通り、周囲を見てみれば巨人の暴れた跡であろう破壊された家の残骸などが散り張っている。被害は相当のようだ。
 また巨人が攫っていったイゾルデというトリスタンの顔なじみの婦人についてもディナダンの話と合わせて聞いてみた。イゾルデはここ一帯を統治する上流騎士の娘らしい。
 上流騎士というのは国の主に与えられた領地を守る騎士のことである。その騎士に使えるのが下流騎士という。要は上流騎士が由緒正しい血脈の騎士であり、下流騎士は下っ端なのだ。ガウェインとランスロットは上流騎士、ケイとルーカン兄弟の家系は下流騎士である。
 尤も今はそんなことは関係ないが。
 イゾルデは上流騎士の娘らしい気品を兼ね備えた美しい女性だが、明るく気だても良く、この村にも何度か来ては子供達の遊び相手になってくれたという。その彼女が巨人によって攫われたのは三日ほど前のこと。強大な肉体と力を持つ巨人に対抗する術を戦いとは無縁の村人達には持っておらず、イゾルデが連れて行かれるのを見ているしかなかった。
 何とかして救う方法はないかと話し合っていると彼女を迎えに騎士がやって来た。名はトリスタン。イゾルデとは昔なじみだという彼は彼女が巨人に攫われたと知るやいなや、村人達の制止も聞かず、ひとりで巨人のいる谷へ向かってしまった。その後ディナダンが事態を聞きつけ、現在に至るのだそうだ。
 しかし、話を聞いている内にケイは疑問がいくつか湧いてきた。ひとつは何故巨人が最近になって急に暴れ始めたのか。基本的に魔物は人里から離れた場所を好む。住処のすぐ近くの村だからといって、時折なら襲うことはあっても同じ場所を頻繁に訪れることはほとんどない。それが何故この村だけ、しかも最近になって突然姿を見せるようになったのだろうか。
 もうひとつ不思議なのは、人を攫っていったのがイゾルデが初めてだということだ。それまでは村で暴れることはあっても人を攫っていったりはしなかったらしい。単なる気まぐれか。それとも彼女に何か惹かれるものでもあったのか。
 どうも納得がいかない話ばかりだが、村人全員が嘘をついている様子はない。イゾルデという婦人が巨人に攫われ、トリスタンがそれを追ったのを事実のようだ。ならば巨人の真意が何であろうと彼らを救うため谷へ向かうことは変わらない。
 村人達に2人を救うこと、巨人を退治することを約束し、アーサー達は谷へと急いだ。

 谷には思っていたよりも魔物の数は多くなかったが、構造が想像以上に入り組んでいるのが非常に難点だった。
 迷路のように道がいくつも分かれている上に周囲は同じような岩の景色ばかり。印をつけながら進んでも少し気を緩めただけで迷ってしまいそうだ。
 数度目の分かれ道に差し掛かったとき、ベディヴィアがひとつ提案をしてきた。このままでは巨人と遭遇する前に疲弊するか迷い込んで脱出不可能になる可能性が多い。ならばリスクは大きくなるかもしれないが、二手に分かれて行動した方が良いのではないか。一組が片方の道を調べ、一組はこの場で待機。巨人が片方の道にいれば合図の魔法を送る。いなければ戻って合流し、もう片方の道を行く。
 この提案をアーサーは悩んだ末に承諾し、道を調べるのはアーサーとベディヴィア。待機するのはケイとディナダンという組み合わせとなった。ケイとしてはディナダンと二人きりになるのは正直拒否したかったが、ディナダンをアーサーと行動させることはもちろん出来ず、自分とベディヴィアの剣の腕の差を考えればこの選択しかなかった。それに自分がディナダンと二人だけになれば他の者がいては聞けないことを色々聞くことができる。何故自分に出会ったと嘘をついたのか、を。
 道を進んでいくアーサーとベディヴィアの姿が見えなくなったのを見計らい、意を決してケイは声をかけた。
「あ……あの、ディナダン郷」
 緊張気味なこちらにディナダンは愛想の良い笑みを向けてくる。
「そのように畏まらなくても結構ですよ。どうぞディナダンとお呼び下さい」
 出来るわけないだろう、そんなこと。
 悪態をつきたくなるのを抑えてケイは話を続ける。
「そ、それは、いいとしまして」
 体ごと向き合わせると目が合った。思わず睨み付けてしまったが、ディナダンは笑みを崩さない。
「昨日、貴殿は私に付いてきたと……おっしゃいましたよね?」
 こちらの問いに驚く様子も見せず、ディナダンは「はい」と頷く。とても嘘をついているようには感じられず、ケイはこれ以上聞くのを少し躊躇った。
 ひょっとして嘘をついているのではなく、こちらが覚えていないだけなのではないか。もしそうだとしたら、覚えていない上に怪しんでいる自分はとても失礼だろう。かといって実際に覚えていない以上、出会っているならどこで出会ったかを聞き出さなければどうしようもない。結局するべきことは変わらないのだ。
「……失礼でしょうが、貴殿はいつ私にお会いになったのですか?」
 本題を口にすると、ディナダンが元々大きい目を更に大きく見開いた。流石の彼も今の問いには驚きを隠せなかったようだ。
「ひょっとして覚えていらっしゃらない?」
「……申し訳ありませんが」
 意外そうに問いかけてくるのにケイは短く謝罪の言葉を述べることしか出来ない。しかし、ディナダンはそれを聞くと今度は困ったような笑みを浮かべた。
「そうですかあ。残念だ。私にとってあの出会いは衝撃的だったのに」
 眉を八の字に曲げたその姿は、言葉ほど残念そうに見えないのは気のせいだろうか。
 それにしてもこの様子からすると、自分と彼は本当に出会っていたようだ。ならばいつどこで? 自分は記憶力に自信があるわけではないが、物覚えが激しいわけでもない。ディナダンが特に目立つ顔立ちではないからといって、出会っているなら忘れるとは思えないのだが。
「差し支えなければ、どこで出会ったか教えていただけませんか? 教えていただけたなら思い出せると思うのです」
 考えても答えは出ないと踏んだケイは恥を承知で、自分と彼が出会った経緯を問う。ディナダンは顎に手を当てて言った。
「そうですねえ。でも……本当に覚えていません? そんなことはないと思うのですがねえ」
 だから何度もそう言っているだろうに。
 勿体ぶるようなその態度に苛立ちを感じたケイは今度こそ悪態をついてやりたくなったのだが。

「僕のことも」

 ディナダンの口から発せられた、先程までとは明らかに異なる声色に悪態は一気に引っ込んでしまった。
 今の甲高い声は、忘れたくても忘れられない。そう、自分がこんなに悩む原因となったものから発せられていたのと全く同じ声。ということは……。
「あ……あのときの道化!?」
 ケイが驚愕の声を上げる。ディナダンの表情がぱっと明るくなる。
「そうです! やっぱり覚えていてくれたのですね!」
 忘れるわけがないだろう。あんな器の小さい言動をとったことを簡単に忘れられたらどんなに良いか。しかし悲しいかな、人間は抹消したい記憶ほど鮮明に覚えているものだ。
 派手な化粧と衣装。無駄に大きい動作。耳障りのする甲高い声。苛立つ満面の笑み。そのどれも瞬時に記憶から引き出すことが出来てしまう。
 まさかあの道化がディナダンだったとは。確かに彼と自分は出会っていた。それでもまだ謎は残っている。
「ど、どうしてあのような格好を……?」
「旅の道化を偽って情報収集に回るのが私の仕事なのですよ。まあ、あの格好は半分私の趣味なのですけれどね。ちなみに化粧取りと着替えはものすごく速いんです。これ、私の密かな自慢」
 茶目っ気たっぷりに片目をつぶっても可愛らしいなどと思うはずもなく、趣味かどうかなど知らないし、そんな自慢も聞きたくもない。第一そちらから呼んでおきながら何故あのような姿で来る必要があるのだ。
「あの街での目的は私と会うことだったのですから、わざわざあのような格好をしなくて良いでしょう。そもそも出会った時点で何故すぐにおっしゃらなかったのですか」
「最初の出会いの時は子供達がいましたからすぐに名乗るわけにもいきませんでしたし……。子供達を帰した後に名乗ろうとしたのですが、どうやら貴方を怒らせてしまったようで」
 申し訳ありませんでした、と頭を下げるディナダンにケイは困惑する。彼の答えは道化の姿で現れたことを説明していなかったが、自分に名乗ろうとしていたことは分かった。ケイが苛立ちに任せて怒鳴りつけなければ彼はすぐに声色を戻し、自身がルグスの騎士であることを明かしていたのだろう。そう考えれば非はこちらにもある。
「いや……あの時は私も大人げなかったといいますか」
「貴方は悪くないですよ。僕が少々強引だったのがいけないんです」
 いや、少々どころではなかったが。
 そう突っ込みたくなる気持ちをケイは咳払いをひとつすることで誤魔化した。
 それにしても。
(謎は解けたけれど……これはこれで問題だ)
 やや顔を伏せてケイは考え込む。
 あの道化がディナダンだったということは、彼に対して自分が晒した醜態も知っていることになるではないか。もしもあの醜態をアーサー達の耳に入ろうものなら、彼らに合わせる顔がないどころか傍にいることさえ出来なくなってしまう。それは困る。非常に困る。そのような事態は何として避けなければ。
「あの……そのことでひとつお願いがあるのですけれど」
 再び向けられたケイの顔が妙に必死であることに気付いたディナダンは不思議そうに首を傾げる。周囲に誰かがいるわけではないが、話が話だけにケイの声は自然と小さめになった。
「……私と貴殿の出会いの真相については他言無用していただきたいのです」
「なんだ、そんなことですか。もちろんいいですよ」
 こちらの懇願にディナダンはあっさり頷いた。理由を問われたらどうしようかと思っていたが、話の分かる人物のようでケイは安堵する。
 だが、その後すぐにディナダンはこんなことを言ってきた。
「でも、ひとつ僕のお願いを聞いてもらえますか?」
 笑いながら告げられたその言葉にケイは嫌な予感が走る。内緒にする代わりの願いなどが大したことのない願いのわけがない。万が一ログレスの今後を揺るがすような願い事をされたら、了承することは出来ない。たとえこちらの醜態を暴露されても。
 悪い方向にしか考えが向かないケイは表情にも自然とそれが浮かび上がり、眉の辺りや額に皺が寄ってしまう。そこからディナダンもケイの心の内を覚り、苦笑しながら付け加えた。
「嫌だなあ。そんな顔しないで下さいよ。それほど難しい事ではないと思いますし、ケイ卿のお心次第といいますか」
 ケイはますます訳が分からなくなる。自分の心次第の願いとは一体何なのだろう。自分が叶えられることなど大したものはない筈だが。
「その……」
 続きを待っていると、今度はディナダンがやや顔を伏せ、少し照れたような表情になり、何故か恥ずかしそうに言い淀んでいる。そんな口にすることを躊躇うことなのだろうか。ケイには彼が言おうとしていることが全く想像出来なかった。
 早く言ってくれないかと促そうとした、そのとき。
 突然背後に気配を感じ、ケイは勢いよく振り返った。
「誰だ!」
 叫ぶと同時に背後の相手を睨み付ける。
 するとそこに立っていたのは、何とベディヴィアだった。
 思いがけない人物にケイは目を見開く。どうしてアーサーと共にいる筈の男がここに? しかも周囲を見ればひとりしかいないではないか。
「お前、ひとりか? 陛下は?」
「すまない、はぐれた」
「はあ!?」
 想定外の返答に思わず素っ頓狂な声が出てしまった。ベディヴィアそんなこちらの様子には意に介さず、更に言った。
「奴が現れたんだ。アンブロシアが」
「アンブロシアが……!」
 ディナダンが声を上げるのが耳に入ると同時にケイも表情を強張らせる。
 アンブロシア。あの皇帝の傍に仕え、彼を操っているという魔女の男がこの谷へ来ているというのか。こちらの動きを嗅ぎつけ、手を下そうとしているのだろうか。五日の猶予を与えると言ったのもそのためか。だとしたら、もしかすると最近の巨人の暴挙もあの男が関与しているのかもしれない。あの男は魔女だ。皇帝を操るように魔物を操ることなど造作もない筈だ。
「そう。奴の奇襲は何とか防ぐことが出来たのだが、俺と陛下は引き離されてしまったんだ」
「馬鹿野郎! 何やってんだよ!」
 同胞の失態にケイは声を荒げる。自分よりもアーサーの護衛には相応しいと思ったから彼に託したのに結果はアーサーをひとりにしてしまった。それだけは決して起こり得てはいけないことだったというのに。
 怒りが収まらないでいると背後から肩を叩かれた。視線を向ければディナダンが沈痛な面持ちをしているのが視界に入り、ケイは少しだけ冷静さを取り戻した。
 ベディヴィアを責めたところでアーサーがひとりになってしまったという状況が変わるわけではない。それに二人が危機に陥っていたとき自分はここで如何に自らの醜態を隠すかで頭をいっぱいにしていたのだから。そんな自分にこの男を責める資格など最初からないのだ。
「すまない……。だが、万が一はぐれた場合のことを考えて陛下と落ち合う場所は決めてあるんだ。まだ奴がどこかに潜んでいるかもしれない。一緒に来てくれ」
 謝罪の言葉を述べたベディヴィアは気持ちを切り替えるように表情を引き締める。ケイとディナダンもまたそれに倣い、速やかに同意した。ベディヴィアは頷くと落ち合い場所に案内するために先程行った道へ再度進んでいく。ケイ達もすぐにその後を追った。今はとにかく魔女よりも早くアーサーと合流しなければならない。

 そう、アーサーの安否ばかりに気が向いてしまっていたケイは肝心なことを見落としてしまっていたことに気付かなかった。
 気付くことが出来なかったのだ。

スポンサーサイト
[ 2008/06/28 21:39 ] オリジナル小説中編 | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

春菜

Author:春菜
ニコジョッキーブログはこちら

2006年5月16日開設

ぬるいゲーマーです。

管理室

FC2カウンター
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。