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Sir Kay~Brother Of King~第一章<5>




   第一章「騎士ケイ」<5>



 一人で歩いていても、もう魔物の気配すら感じない。全て、倒したか森へ逃げ帰ったのだろうとケイは実際に感取することで確信した。
 歩きながら、ふと先程の剣の事を思い出す。
 ログレスの王の証であるという謎の剣。
 何故、それを抜けば王の証になるのだろうか。
 お触れを出したマーリンの考えが、わからない。
(…て、別にわからなくてもいいか。俺には関係ないし)
 ケイは、特にその剣を抜くのに挑戦しようとは思わなかった。抜けるのはログレスの王になる資格のある者だけなら、結果は目に見えている。
 剣も馬も弓も、何一つアーサーに敵わない自分に王の資格があるとは、どうあっても考えられなかった。
 そもそもマーリンの策謀に関わるつもりもない。
 今はアーサーを見つけなければ。
 そうこうしている内に、目的の場所まで辿り着いたようだ。
 いくつかある中でも一番大きく深いであろう、洞穴。
 ルーカンが示していたのは、ここだったはずだ。とはいえ、遠く丘の上からのことだったので断定は出来ないが。
 一体、アーサーはここで何をしているのだろう。
 考えても仕方がないので、ケイは奥に進んでみることにした。もう魔物はいないのだから、危険はとりあえずない筈だ。
 そうはいっても、こういった中へ入るというのは何故か妙に緊張する。無意識に歩く速度が落ち、足音を立てないように進んでしまう。
 実際に入ってみて、この洞穴が思っている以上に広大なものだとわかった。天井も随分高い。ケイの身長(ちなみに173cm)の倍以上はありそうだ。
 しかもかなり奥も深いようで、そろそろ入り口の光の恩恵をこうむることが出来なくなりそうだ。
 そこでケイは手をかざし、呪文をつぶやき始めた。
 すると、徐々に掌の間から丸く小さな光の固まりが浮かび上がってくる。
 自らの手で明かりとなる光球を作り出す魔法、『ライト』だ。
 剣も馬も弓も駄目。勉学も人並み以下の自分であったが、唯一魔法では得意なものが一つだけあった。それがこのライトの魔法である。
 といっても、別に素質があったわけではない。理由があって使用する回数が他の魔法より多かっただけだ。その分、どうすれば長く、より明るく作れるのか考えることも増え、通常よりも明るく長持ちする光球が作れるようになった。それだけのことである。
 最終的にリンゴほどの大きさとなった光球を掌の上に浮かび上がらせ、更に先へと進む。
 しかし、いくら進んでも暗い道が続く。途中、辺りを確認するが、ゴツゴツした岩壁が見えるばかりだ。
 同じ景色が続くこと、光が一部にしかないこと、周囲の暗闇に圧迫感を感じること。
 何より目的の人物が一向に見つからないことに、ケイは苛立ちを募らせ始めていた。
 その苛立ちは足にも影響を及ぼし、ついに立ち止まると壁にもたれかかってしまった。
(…ったく。どこにいるんだよ、あいつは)
 髪を乱暴に掻きむしりながら、心の中で悪態を付く。
 天井に顔を向けると、大きい溜息が自然にこぼれた。
 と、次の瞬間。
「兄上!」
「!!!」
 すぐ傍から人の声が耳に響き、ケイは驚きのあまり岩壁から身を離した。
 飛び上がらなかったのは奇跡に近かった。その証拠に心臓がバクバクと音を立てて止まらない。
「兄上?」
 声の主は嬉しそうだった先程とは違い、今度は心配そうに話しかけてきた。
 ケイは胸に手を当てて動悸が治まるのを待ってから、声の主へ顔を向ける。
 そこには、自分との間に光球を挟んで立つアーサーの姿があった。
 兄が自分の方を向いてくれたからか、その表情がほころびる。
 捜していた弟をようやく見つけたことで、驚きで忘れていた怒りがケイの中で沸々と蘇ってきた。
「な…にやってんだよ、お前は!」
 駆け巡る衝動のまま、怒鳴りつける。
 しかし、ケイがそんな風なのはいつものことなのでアーサーは気にせず、嬉しそうに笑うのみだ。
「兄上のライトの明かりが見えたので、つい嬉しくなってお声をかけずに駆け寄ってしまったんです。驚かしてしまい、申し訳ありませんでした」
「べ、別に驚いてなんかいねぇよ」
 明らかに嘘だとわかるが、兄としての自尊心か、アーサーにだけは弱みを見せたくなかった。
 思わず見栄を張ってしまう。
「も、申し訳ありません」
 しかし、疑うことを知らないアーサーは自分の勘違いだと思い、神妙な面持ちに変わると素直に非礼を陳謝してきた。
 その姿に少し心が痛んだが。それでも一度言った手前、訂正もしたくなかったのでそのまま話を続ける。
 何故こんなところにいるのか聞く前に一度小さく息を吐いていると、アーサーの方から話しかけてきた。
「兄上は、ルーカン殿からお聞きになってここに?」
「ああ、お前がここにいるっていうから……」
 ハッとして、ケイは口を手で抑える。先手を取られるとは思わず、しかも不意打ちだったので、ついポロリと本音を言ってしまった。
 当のアーサーは、少し驚いているようだ。
 ルーカンから聞いたであろうことは予測していたが、まさか自分がいるからこの洞穴に来たとは夢にも思わなかったのだろう。
 それは、アーサーの中に一つの期待を生ませたらしい。
「…もしかして、捜しに来て下さったのですか?」
 微かに瞳を輝かせながら控え目に出されたその問いに、ケイはグッと息を詰まらせた。
 それは確かに事実である。自分は彼を捜すために、こんな洞穴まで来たのだ。
 しかしそれを素直に口にするなど、絶対に出来ない。
 こんな表情を見せられたら、尚更言えない。
 それがケイの性格だった。
「か、勘違いすんなよ。お前に何かあったら俺の責任になるんだ。それだけだ!」
 結果、出てきたのはこんな言葉でしかなく。
 口にしてから、しまったと思うが、後の祭りだ。
 何故、こうも自分は素直になれないのだろうか。特に弟に対しては。
 一応、先程の理不尽な言動を詫びるつもりでいたのに、これでは再現をしているだけである。
 心の中で悶々としていると、クスリと微かな笑い声が耳に入ってきた。視線を元に戻す。
 アーサーの表情は変わらず、にこやかなままだった。
「わかっています。それでも嬉しいです。兄上が……あ!」
 嬉しそうな表情のまま、自分とは反対に思った事を素直に言葉するアーサーだったが、途中で何かを思い出したかのように声を上げた。
 その様子に、ケイも何事かと目を見張る。
 アーサーは慌てて表情を引き締めて、頭を下げてきた。
「も、申し訳ありません。従者の身でありながら、またも『兄上』などどお呼びしてしまい……」
 そういえばあの時、そんなことも言ったんだったか。今は全く気にも止めていなかったから、気付きもしなかった。
 こんな時に、こんな場所で思い出すなんて相変わらず律儀である。言い出したのは、ケイ自身だが。
 しかし不思議なことに、頭を下げる弟の後頭部を見つめていると、先程までの苛立ちがスッと消えていくのを感じ、自然とぽつりとつぶやいていた。
「…いいよ」
「え……?」
 予想と違う答えだったのか、アーサーが上目遣いで見つめてくる。
 ケイは少し視線を背けると、指で頬を掻いた。
「別に二人の時なら、いつも通りで構わねぇよ」
 照れながらそう口にした。
 兄の言葉を聞いて、アーサーの表情がみるみる笑顔に戻っていく。
「…ありがとうございます、兄上」
 心から嬉しそうなアーサーに、ケイはどこか気持ちが落ち着かなくなる。顔も赤くなっているかもしれない。
 弟のこういう表情が、昔から苦手だった。否、どういう表情をすればいいのかわからなくなってしまうというのが正解か。
 ただ、苦手でもわからなくても、先程のはこちらに非があるのは確かなのだ。
 謝るタイミングを図るため、今度はこちらから問いかける。
「…それで?こんなところで一人で何やってたんだよ」
「え……、あの…少し気になる事がありまして」
 アーサーは口ごもって、なかなか理由を言おうとしない。
 それもそうか、とケイは感づく。説明するにはマーリンに会ったことも伝えなければならない。アーサーはそれを迷っているのだ。
 なら、こちらから言うしかないようだ。
「マーリンのじいさんに言われたんだろ」
「どうしてそれを!?まさか、ルーカン殿が……」
 ケイの口からその名が出るとは考えていなかったのか、アーサーは驚く。
 だが、すぐに情報源がどこなのか察したようだ。
「喋ったぜ。あの時遅れてきたのがじいさんに呼び止められたためってのも…な」
「そう…ですか」
 隠し事がばれてしまったせいか、アーサーの表情が重くなった。
 一気に気まずい空気が二人の間を流れる。
 ケイは謝ろうと何度も口にしようとしたが、何故か上手く言葉に出来ない。
 結局出てきたのは。
「…気になる事って何なんだよ」
 そんな、そっけない言葉でしかなかった。
 兄の態度に気付かなかったアーサーは、事実を話すことを決めたようだ。
「マーリンから『岩が降る。注意せよ』と助言を受けたのです」
 そう言うと、突然奥へと歩き始める。ケイも後を追う。
 少し歩いていくと、行き止まりに辿り着いた。最奥には、丸い形をした奇妙な大岩があるだけで他には何もない。
 二人は大岩の横に並んで話を再開する。
「ルーカン殿や他の騎士の方々にもお教えしたら、崖から石を投げてきたゴブリン達が現れたので、それだろうと言われて」
「倒したんだろ、そいつらも。だったらもう終わりじゃねぇか」
「そうですけど……。何か気になって」
「考え過ぎだろ。お前の悪い癖だ」
 ケイは大岩に寄りかかって、アーサーの懸念を否定する。
 マーリンは魔術師だけでなく、予言者としてもその名を馳せていた。これまでにもアーサーに、いくつかこの先のことを予知したこともある。
 しかし、そのほとんどが曖昧な言葉ばかりで、ケイには当たっているのかいないのか判断出来なかった。予言とはそういうものだ、とルーカンは言っていたが。
「…そうですよね」
 考え抜いた結果、完全に納得は出来ていないものの、アーサーはケイの言葉を信じることにしたようだった。これで用は済んだ。
 さっさとここから出ようと大岩から身体を離そうとしたケイだったが、その前に気になっていたことを思い出す。
「…そういえば、さっき何で俺だってわかったんだよ。ライトの魔法なんてどれも一緒だろうが」
 そう。初めここに来た時、アーサーは姿を見てケイだと気付いたのではなかった。ケイが発動していたライトの魔法を見て気付いたといっていたのだ。
 その意味がケイにはわからない。
 だが、アーサー本人は当たり前だと言わんばかりにわかりますよ、と即答してきた。
「兄上の明かりには、他のものにはない暖かさがありますから」
 そう言うと、そっと光球に手を伸ばし、微笑む。
「僕の好きな暖かさです」
 その言葉と大事なものに触れるような仕草に、ケイは何も言えなくなってしまう。
 光球から放たれる淡い光が二人を包む。
 その中でケイは、優しい笑みを浮かべながら光球を見つめているアーサーを盗み見ていて気付いた。
(こいつ、こんなに背伸びてたのか……)
 確か自分の記憶では、アーサーの目線はもう少し下にあった筈である。
 しかし今の二人の目線は、ほぼ同じだ。
 思えばここ数年、彼のことをこんな間近で見たことがなかった気がする。傍に来られても、いつも視線を逸らしてばかりだった。
 その間に、弟はこんなにも背を伸ばしていたのか。
 顔立ちも、まだ幼さが残っているが随分引き締まってきていた。
 透きとおるような白い肌。海を象った青い瞳。太陽のように輝く長い金髪。
 アーサーを形成するひとつひとつが、自分とはまるで正反対だ。
 自分を形成するのは浅黒い肌。黒い瞳。同じ色の短髪。
 ここに他人がいたら、とても兄弟には見えないだろう。
 こうしてみて、改めて認識させられた。
 自分達が、血が繋がっていない事を。
 同時に、それでも変わらないものを。
 アーサーの笑顔は苦手だ。だが決して嫌いではない。
 笑顔も。そこから感じ取れる純粋さも。
 そう、嫌いではないのだ。
 心のくすみが解けて、スッと身体も軽くなった。
 やっと今なら、言えそうな気がする。
「なあ……」
 ケイは地面に顔を向けて声をかけた。
 こちらを向いたのだろう。アーサーの視線を感じる。
 大きく息を吐いて緊張を解し、気持ちを整えた。
 詫びるなら、今しかない。
「さっきは……ぶっ!」
 言葉は最後まで発せられなかった。
 何故なら顔を上げたと同時に、ケイはアーサーに横へ押し飛ばされてしまったからだ。
 そのせいでライトの魔法が消え、辺りは再び暗闇に包まれる。
 突然のことで受け身もとれず、そのまま壁に激突してしまう。
 いてて、とぶつけた腕をさすると、アーサーのいる方向を睨みつける。
 入ってきた時よりは暗闇に慣れたのか、姿形ぐらいは認識出来た。
「おい!何する……」
 怒鳴ろうとした口が途中で止まる。
 意識が、さっきまで自分が寄りかかっていた大岩に移ったからだ。
 アーサーも同じ方向を見ているようだった。
 ズズズ、という地鳴りのような音を立てて動き始めた大岩に。

 それは大岩ではなく、身の丈が三メートルを優位に超える、巨人だったのだ。

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[ 2006/07/08 23:30 ] オリジナル小説連載 | TB(0) | CM(0)
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2006年5月16日開設

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