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ミニSS・5回目

連載ミニSSシリーズ5回目です。
遅くなって本当に申し訳ありません。でもこれでラストです。
久々に書いた作品でしたから、色々読みにくい部分もあるかもしれませんが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。



変わらぬ2人



 いつもの日常から数年後。

 ケイはキャメロットの庭園へと不機嫌な表情で向かっていた。理由は忽然と姿を消したアーサーがそこにいると推測したからである。
 兄が弟を捜す。その図は昔と同じようであるが、あれから自分達兄弟の関係は随分と変わってしまっていた。
 今やアーサーはログレスを統べる英雄王であり、自分は彼に仕える宰相という立場に就いている。そのために当初は様々な葛藤が生まれ、お互いの関係は修復不可能にまで陥ったかと思われたが、紆余曲折の末、何とか完全な崩壊は免れた。

 立場は変わってしまっても、決して変わらぬものがあると確信したから。

 庭園に来たところで人影が視界に入り、足を止める
(……やっぱりここか)
 思った通り、目当ての人物がそこにいた。
「陛下!」
 今の彼の呼称を叫べば、彼はゆっくりとこちらを振り返る。
「やあ、ケイ卿」
 こちらの心配などには気付いているのかいないのか。朗らかに笑う彼に溜息を吐きたくなってくる。
「やあ、ではありません。勝手にいなくなっては皆が心配するでしょう」
「すまない。少し散策するだけのつもりだったのでな」
 詫びてはいるものの、その表情は笑顔を崩すことはない。自身が突然姿を消すことがどれだけ周囲に影響を与えるのか、まだ分からないのだろうか。正式にログレスの王となって半年が過ぎようとしているのに。
 自身が特別な存在である。その自覚がありながら、決してそれを表には出さない。そんなところは昔とちっとも変わらない。
 変わらないことが美徳であるのかは、正直疑問ではあるが。その分まわってくるツケを払わされる羽目になるこちらの身としては。
「それでもどこかへ行くときは誰かに報告してからになさって下さい。貴方はまだご自分の立場を理解していらっしゃらないようだ」
 幾分皮肉を込めれば、流石に彼も察したのか笑顔に苦笑が混ざる。
「はは、耳が痛いな。けれど、言わずともすぐに見つかっていたさ」
 意味が理解できない言葉にこちらが首を傾げると、彼は笑みを深くして言った。

「兄上なら私の居場所がすぐ分かると思っておりましたから。少し安心していたようです」

 驚きと恥ずかしさに目を見開いてしまう。顔が赤くなることだけは何とか免れたが、体が仄かに熱くなっているのを感じた。
 何故、彼はこちらが赤面したくなるようなことを恥ずかしげもなく口に出来るのか。しかも突然主従から兄弟の口調に戻るのは反則だ。そうやって無意識に人の表の仮面を剥がすところもちっとも変わらない。
 否、それは当然だ。
 彼の……弟のこの純粋さを掻き消えさせるものなど存在しないだろう。

 決して純粋さを失わない。それが『アーサー』なのだから。

「……俺はそこまでお前の行動パターンを把握してねぇよ」
 顔を元の不機嫌な表情に変え、こちらもまた言葉を崩す。
 2人だけで、どちらかが言葉を崩したときは『主従』から『兄弟』に戻る。それが自分達で決めた合図だった。
「でも、現にこうして来てくれたではありませんか」
「それはたまたまだ! ……ほら、さっさと戻るぞ!」
 無邪気に笑いかけてくる弟を感情のままに怒鳴りつけ、背を向けて元来た道を戻り始めた。すると、そんな自分を後ろから慌てて追いかける足音が聞こえてくる。幼い頃と全く変わらない、自分達兄弟の姿がそこにあった。
 変わらないのは弟ばかりかと思っていたが、自分も同じのようだ。尤も自分のは他人であれば変えるべき部分であろうが。
 だが、弟はそれで良いと言う。そのままの、ありのままの兄でいて欲しいと願う。
 だから……自分も、今の自分のままでいいのだと思うことが出来る。
 あの日。父の葬儀の日、改めて誓いを立てたときにそう感じたのだ。

 でも、そんなことは絶対に口にはしない。

 立場は変わってしまったとしても、自分達の間柄は変わらないことがとても心地よいのだと、自分が思っているなんて。
 背を向けた自分の後を追う足音が耳に入ってくる度に自然と微笑みが浮かんできてしまうことなんて。



 絶対に教えない。

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[ 2007/08/25 23:21 ] オリジナル小説短編 | TB(0) | CM(0)
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2006年5月16日開設

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