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ミニSS・4回目

連載ミニSSシリーズ4回目です。
今回は何とか間に合いました!



いつもの終結



 別れた廊下に戻ってきてみれば、そこに弟の姿はなかった。てっきり先程と同じように立ち尽くしているかと思っていたのに。
 考えが外れたことで、せっかく茶を飲んで収まった苛立ちが沸々と蘇ってくる。

 あいつは本当に自分を苛立たせることが上手い奴だ。

 心の中で愚痴り、頭を乱暴に掻きむしる。とりあえずここにいても仕方がないので自分も移動する。
 ここにいなくても居場所は分かっているのだ。弟が行くところなんてひとつしかない。
 外に出て邸の裏に回る。そこには生前、母が作ったという小さな花壇があり、ささやかな花を咲かせていた。今は使用人が手入れをしていて変わらない美しさと暖かさを保っており、自分達家族の心を癒してくれている。
 弟もあそこがお気に入りだ。だから、必ずいる。必ず。

 そして。
 思っていたとおり、そこに探していた背中があった。

「……おい!」
 溜まっていたものを吐き出すように怒鳴り声が周囲に響く。それにビクリと肩を震わせて、弟が振り向いた。
 頬に涙の跡のような筋が見える。どうやら直前まで泣いていたようだ。
「兄上……?」
 掠れた声に返答せず、大股で足音を高く鳴らせながら近付いていく。弟は表情を驚きから怯えに変化させ、目を逸らすように俯いた。
「勝手にどっか行くんじゃねぇよ!」
「ご……ごめんなさい」
 肩を竦める弟を見てハッと思い出す。これでは先程と同じではないか。自分がここに来たのは、同じことをするためではない。
 だが、いざ本人を目の前にしてしまうと、どうしてもまた同じ態度をとってしまう。ここまでくると最早習性だ。
 本当に言わなければならないことは、言いたいことはこんなことではないのに。
 開閉するばかりで口から言葉が出てこない。当の弟は俯いたまま。無駄に時間だけが過ぎていく。
 続く沈黙に耐えられなくなったのは自分の方だった。最初の目的も忘れ、後ろを振り返り、来た方向へ歩き出したのだが。
「あ……」
 背後から漏れた声が足を止める。だからといって上手く言葉が出てこないのは変わらない。もうどうしたら良いのか。
 内にある苛立ちが弟のへのものなのか自分へのものなのか、それすらも分からなくなってきたが、これ以上は抑えることが出来ないことだけは感じる。
 だからその勢いに任せてもう一度振り返ったのだった。

「……さっさと来いよ!」

 結局口から出てきたのは、いつもと変わらない悪態をついたようなもので。結局言いたかったことの何万分の一も出てこなかった。
 何をやっているのだろうか、と自分で自分が嫌になってくる。
 しかし、前を見てみれば。弟はきょとんとした顔をした後。
「……はい!」
 先程までの落ち込みはどこへやら。満面の笑顔になり、元気よく頷くではないか。
 一体今の言葉のどこにそんな嬉しくなる要素があったというのか。半ば呆れながらも満面の笑顔を振りまく弟を見ていたら、これでいいかと思えてきた。別に笑顔が見られたのが嬉しいわけではない、絶対に……多分。
 軽く舌打ちをして体を元来た道の方へと戻す。すると、弟が喜々として自分の隣に並んできた。
 気付いたときには叫んでいた。それはもう条件反射のように。
「俺の横に並ぶな!」
「え?」
「来るのはいいけど並んでいいって言ってねぇぞ! 後ろからついてこい!」
「そんな……」
「だったら来んな!」
 笑顔が一気に消え失せた弟が戸惑うのを尻目に邸へと歩を進める。もう振り返ろうとはしなかった。少ししてからゆっくりとついてくる足音が聞こえてきたから。



 何ひとつ変わらない。結局いつもの繰り返し。
 でも、それで良かった。
 いつの間にか心に苛立ちを感じなくなっていたことに気付いたから。



 これがこの兄弟ケンカの終結。

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[ 2007/08/11 23:31 ] オリジナル小説短編 | TB(0) | CM(0)
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2006年5月16日開設

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