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ミニSS・3回目

連続ミニSSシリーズ3回目です。
遅くなって本当申し訳ない(-_-;)。
今から言うのもなんですが……次回も間に合わないかも。
週一じゃなくて隔週更新にしようか真剣に悩んでいます……。



いつもの出来事



 背中に刺さる視線に、ついに我慢が限度を超えた。不機嫌な表情そのままにこちらが振り返る。
 案の定、そこには思った通りの人物が立っていた。
「……いつまで見ているつもりなんだよ」
「ああ、気付いていたのかい?」
 思い切り睨みつけるも、相手は全く動じない。それがより一層苛立たせる。
「わざとらしく溜息付いていたのはどこのどいつだ」
「おや、こっそりやっているつもりだったんだけどね。これは失礼」
 邪魔をしたかな、と心のこもらない謝罪を涼しい表情で言い放つ姿は、本当に憎らしく思う。もっと文句を言いたいところだが、自分が口で勝てる相手ではないのも事実だった。結局一度強く睨み付けるだけで終わり、鼻を鳴らして顔を背ける。
 すると仄かに良い香りが漂い、鼻を掠めてきた。何かと再び振り向けばいつの間にいたのか、涼しい表情をしている奴の弟がお茶の入ったティーカップを自分に突きつけているではないか。思わず驚いてしまい、後ずさりをする。
「飲め」
「ああ、ありがとう」
 もう片方の手にあった同じティーカップを兄に差し出す。兄は快く受け取るとカップに口をつけた。
 そんな光景を呆然と見つめていたところでハッと気付く。自分の邸で、何故客人の一人が茶を持ってくるのか。しかもこの茶の香りを引き出すことは、自邸の使用人では無理だ。
 ということは、答えはひとつしかない。
「人の家の厨房を勝手に使うな!」
「エクター卿の許可はとってあるよ。それより君もどうだい。ベディヴィアの淹れる茶は好きだろう?」
 こちらが言葉を予測していたのだろう。あっさりと返答し、再びカップに口をつけた。
 まだ二つか三つ文句を言いたかったが、当主である父が了承しているのであれば、自分には何も非難する資格はない。納得は正直したくないが、認めるしかなかった。
 今にも吐き出してしまいそうになる罵声を呑み込んでいると、弟の方が更にカップを鼻先へと近づけてきた。渋々それを無造作に受け取り、口をつける。
 暖かい香りと優しい味が喉を通っていくと徐々に苛立ちは収まり、心が落ち着きを取り戻していくのを感じた。
 そこでふと思い出す。確か前にもこんなことがあった。
 そう、あのときも自分は先程のように苛立っていた。そのときもこんな風に彼らがやって来て弟の方が茶を差し出してきたのだ。
 彼が淹れる茶を飲むと、何故か不思議と心が落ち着く。苛立ちで一杯になっていた頭を柔らかく解してくれる。
 これもまた認めたくないが、この茶のおかげで前は思っていた以上に早くこちらのいざこざを解決出来たのだった。

(そういえば……)

 冷静さを取り戻した頭に過去の記憶を蘇らせる。
 今とこの間だけではない。その前も同じではなかったか。
 自分にいざこざがあったとき、まるで聞きつけたかのようにこの兄弟が邸に来て。兄は何も言わずに自分に視線を向け、弟は茶を差し出してきた。そして、更にその前も……。

 そこで思い出すのを止める。これ以上考えては苛立ちが収まった心に別の苛立ちが募っていくと感じたからだ。
 残った茶を一気に飲み干し、無造作にカップを弟の方に押し返す。相手がそれを手に取ったのを確認すると二人の間をすり抜け、部屋を出ていく。
 彼らの真意を理解した今、これ以上一緒にはいたくなかった。
「どこへ?」
 わざとらしく尋ねてくるが酷く煩わしい。
「……分かっているなら、聞くな」
 振り返りもせずに一言そう返し、部屋を離れる。二人はそれ以上何も言ってはこず、また追いかけてくることもなかった。
 当然だ。彼らにとってこれはいつものことなのだから。
 苛立つ自分に視線を投げかけることも。茶を出すことも。
 心を落ち着かせた自分がどういう行動をとるであろうことも全てわかりきっているのだ。
 腹が立つ。本当に腹立たしくて仕方がない。



 しかし腹は立つが、それが自分の足を動かしてくれていることもまた事実だった。
 そして、それもまた腹立たしいのであることも。

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[ 2007/08/06 23:16 ] オリジナル小説短編 | TB(0) | CM(0)
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2006年5月16日開設

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