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Sir Kay~Brother Of King~第一章<3>




   第一章「騎士ケイ」<3>



 『ログレス』は、忠義篤き騎士たちによって栄えている国である。ケイもまた騎士の家系に連なる者として生を受けた。父・エクター卿は、身分はさほどではないものの騎士の鑑と謳われる人物であり、ケイにとって憧れと目標の対象だ。
 そして、ケイにはふたつ下の弟がいる。
 名をアーサー。今年で十五歳になる少年だ。性格は純粋で真面目。兄を心から慕っていて従者としての役目も文句なくこなす。周囲から自慢の弟だなと言われることは稀ではなかった。
 しかし、当のケイはそんなアーサーに対して複雑な感情を抱いている。
 そもそも、アーサーはケイの実の弟ではない。二人には血の繋がりがないのだ。
 アーサー本人は、その事実を知らない。ケイもアーサーが、実際はどこの何者なのかまでは聞かされていないままだ。
 アーサーがやって来たのは、ケイが二つぐらいの時だった。自身も小さかった故によく覚えていないが、赤子のアーサーを抱いた母・エリスの隣に立っていた父が、
「今日からこの子はお前の弟だ」
 と、言っていたことは、何となく思い出せる。
 二人の後ろにいた、額にサークレットを付けた、顎髭の長い老人のことも。
 その老人こそ、アーサーを連れてきた張本人。名をマーリンという。今は亡き、先代のログレス王ユーサー・ペンドラゴンの重鎮として活躍したこともある、著名な魔法使いらしい。
 ケイが生まれた頃、ログレスは暗黒時代の真っ直中にあった。他国からは侵略者達が押し寄せ、国内でも内戦が相次いでいた。先代王ユーサーは、一時期他国からの侵略者達を追い返すほどの勢いを見せたが、ひとりの女性を手に入れるために自ら争いを起こしたことから騎士達への信頼を失い、毒殺されてしまう。
 以後、彼に代わる後継者が見つからずに、十五年の月日が流れることとなる。
 その間に一度は勢いを失いかけた侵略者たちも息を吹き返し、内乱にしては王不在によって更に苛烈が増してしまう。
 ログレスの暗黒時代は終わる兆しを全く見せなかった。
 その中で比較的戦の火種から遠い穏やかな地で育ったケイは、弟となったアーサーと共にすくすくと成長していった。
 先程彼を宥めていたルーカン、ベディヴィア兄弟とは幼なじみの間柄だ。
 兄・ルーカンはケイよりひとつ上、弟・ベディヴィアは同い年である。
 二つの兄弟は幼少の頃から、学ぶのも遊ぶのも常に一緒だった。その関係はアーサー以外の三人が騎士になった今も変わらずに続き、特にルーカン、ベディヴィアはアーサーを本当の弟のように可愛がっている。
 ケイも幼少の頃は、アーサーをただ可愛い弟として見ていた。血の繋がりがなくとも、自分とアーサーは真の兄弟であるという気持ちは消えていない。
 しかし、だからこそケイはアーサーに複雑な感情を抱かずにはいられないのだ。



 魔物が現れたのは街の近く、丘の上に教会が建つ平原である。
 騎士達は教会周辺。その下の平原。更に平原を囲うようにしてそびえる岩壁周辺に分かれて、討伐へ向かった。
 平原へと辿り着いたケイとベディヴィアは、他の騎士達と順調に魔物を屠っていく。数は相当のものだったが、この辺りには森に潜むゴブリンやウルフ程度しかおらず、長年剣の修行をしてきた騎士達には手応えのある相手ではない。
 しかもゴブリンは魔物の中でも特に集団意識が強く、数が少なくなった頃にはほとんどが逃亡態勢に入っていた。
 今ケイが倒そうとした一匹も、周囲に気付くと一目散に逃げ出していく。
「あ!こら、待て!」
 後を追おうと駆け出そうとした瞬間、突然首にマントがからんできた
 圧迫されて、ぐえっと喉が潰れたような声が零れる。
 顔だけ後ろに向けると、ベディヴィアが襟を掴んでいた。
「何だよ!離せ」
「勝負はついた。無益な殺生はするな」
 騎士道に反するぞ、と諭され、ケイは納得してないながらも剣を下ろした。腕を振り上げ、ベディヴィアの手を外させる。
「お前は感情が剣に出ると、エクター卿がおっしゃっていたのを忘れたのか。だから剣先が鈍るんだ。もっと心を落ち着かせろ」
「うっせーな。わかってるよ」
 先程とは打って変わって饒舌なベディヴィアの忠告を、ケイは苛立ちを隠さない言葉で返す。とてもわかっているとは思えない。
 ケイがこのようになるのは、いつものことであった。神経質というわけではないのだが、ちょっとしたことですぐ苛立ってしまう。
 特に弟がらみのときは最悪である。
 それを長年の経験で熟知しているベディヴィアは、話題を変えることにした。
 視線を別の方へと向ける。
「ルーカン達は今頃、あちらか」
 言われてケイも視線を移した。
 アーサーとルーカンが行ったのは、岩壁周辺だ。ところどころに崖があり、その上から攻撃されたらかなりの痛手になる可能性がある。
 更に下には、自然に出来た空洞のような穴も見えた。
「洞窟があるな。あいつ暗いところ駄目だから、あんなとこ入ったら足手まといになるんじゃねぇの?」
 ケイがせせら笑いを浮かべながら皮肉る。
 あいつとはもちろんアーサーのことで、彼が何かにつけて弟をなじりたがるのもいつものことであった。
 しかし、それはとある感情の裏返しなのもベディヴィアはよく知っている。
 突き刺さるような視線を向けるベディヴィアを、ケイは訝しむ。
「…何だよ」
「心配するなら、最初から共に行けば良かっただろうに」
「誰も心配だなんて言ってねぇだろ!」
 予想外の言葉に、ケイは思わず怒鳴り声を上げる。
 憤然としているつもりなのだろうが、ベディヴィアには照れているようにしか見えなかった。すれ違いざま、更に言い募る。
「今からでも行ってきたらどうだ?いつもの歌を歌ってやればいい」
「人の話聞けよ!大体、兄貴と離れた途端ペラペラ喋りまくりやがって。だったら最初から普通に喋れ」
 あまりにも腹が立ったのか、ケイは今の話と関連性のないことまで出してきた。
 その通り、ベディヴィアは普段全くといっていいほど喋らない。大抵は行動を共にしているルーカンが代弁してくれるから、たまに口を開くことがあっても、一言つぶやくぐらいである。
 しかしそれは口下手というわけではなく。
「面倒くさい」
 そう、単に面倒くさいだけなのだ。
 キッパリと言い切る姿に、ケイはガックリと肩を落とす。怒りが一気に消え失せ、脱力感だけが残った。
 ベディヴィアはそんな彼を置いて、さっさと歩いていってしまう。
 その背を恨めしそうに一度睨みつける。すると視線を感じたのか、ベディヴィアは足を止めた。振り返りはせず。
「そもそも全ての原因は、お前が剣を忘れたことではないか。自分の失敗を弟への苛立ちにすり替えても、意味はないぞ」
 鋭く図星を指したその言葉に、ケイはグッと喉を詰まらせる。反論は最早出なかった。
 ベディヴィアはそのまま振り返らず、再び歩き出していく。
 渋々後を追いながら、ケイは岩壁の方に視線を戻す。
 勇敢に剣を振るって戦っているであろう弟の姿が容易に想像出来てしまい、心中が再び黒い靄で満たされていくのを感じずにはいられなかった。

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[ 2006/06/24 23:34 ] オリジナル小説連載 | TB(0) | CM(0)
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2006年5月16日開設

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