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Sir Kay~Brother Of King~第一章<2>




   第一章「騎士ケイ」<2>



 二十年前。ドル・ドナ暦415年。

「兄上!」
 数多くの騎士達がひしめく街中で、同じように騎士鎧を身に纏っているケイはひとつの声を聞き取った。
 聞き慣れたその声に、不機嫌な表情のまま振り返る。
 声の主であるアーサーが剣を手に走ってくるのが視界に入った。
 ケイの顔が、より一層不機嫌さを増す。
「遅くなって申し訳ありません、兄上」
 アーサーが息を整える間もなく、ケイの足下に跪く。長く美しい金髪も乱したままだ。
「本当だぜ。剣取りに行くだけでどれだけかかってんだよ、のろま」
 半ば強引に剣を奪い、ケイはアーサーを目八分に見た。
「それから、今俺はお前の兄貴である前にお前の主なんだ。『兄上』じゃなくて『ケイ卿』って呼べよ。何度言えばわかるんだ」
「す、すみません」
 怒りを含んだ声音で叱咤すると、アーサーは再度謝罪の言葉を述べ表情が曇らせる。
 ケイはそれに気付いていたが、黙殺した。
 不穏な空気が二人を包んでいく。すると。
「よせよ、ケイ。アーサーが可哀相だろう」
 ケイの背後、アーサーの正面から穏やかながらも咎めるような声が割って入ってくる。
 アーサーが顔を向けると、声の主である細目の若者が笑みを浮かべ、その隣に長身の若者が無表情で立っていた。
「ルーカン殿。ベディヴィア殿」
 彼らの姿を見て安堵したのか、アーサーの固い表情がわずかに緩む。
 逆にケイは振り向きも返事もしなかった。
 ルーカンと呼ばれた細目の若者はそんなケイを横目で見て苦笑する。ベディヴィアと呼ばれた長身の若者は無表情のままだ。
 ルーカンは次に視線をアーサーへと向けた。
「気にするな、アーサー。私達は心配していただけだから。何事もなくてよかった」
「心配していたのはお前らだけだろ。俺を一緒にすんな」
 宥めるかのようなルーカンの言葉を、ケイが即座に否定する。
 ルーカンはそれを予測していたため、気に止めなかった。
「照れることないだろう。そもそもアーサーは君の剣を取りに行っていたんだぞ。少しは誉めてやれよ」
「こいつは俺の従者なんだ。俺の言うこと聞いて当然だろう」
「従者は奴隷じゃないんだぞ。それにアーサーは君の弟じゃないか」
「偉そうに言いやがって……」
 そこでようやくケイは振り返り、ルーカンを睨みつける。ルーカン本人は相変わらずどこ吹く風だ。
「お前だって自分の弟が従者だった時は、同じ事していたんだろうが」
「人聞きの悪いこと言わないでくれよ。私はそんな横暴な主じゃなかったさ。なあ?」
「…さあな」
 同意を求めたルーカンに、ベディヴィアは無表情のままぽつりとそう一言つぶやくだけ。
 ルーカンはこれだよ、と肩を竦めて困った顔をする。そのやり取りは、この兄弟にとって日常茶飯事だった。
「ルーカン殿。兄…ケイ卿には何の責もございません。全ては僕…私が至らなさのせいなのです」
 なおケイが言い募ろうとすると、アーサーが割って入ってきた。神妙な顔と口調をして。
 その姿にケイは開きかけた口を閉じ、舌打ちをして顔を背ける。
 ルーカンもひとつ溜息を吐くと、気を取り直すように話を再開させた。
「わかったよ。この話はもう終わりにしよう。早くしないと被害が増えてしまう」
 これまでとは違って真剣味帯びたその口調に、他の三人の表情も引き締まる。
 彼らはこれから魔物退治に向かうのだ。
「…で?俺達の担当は?」
「丘の上の教会とその周辺だ」
 ケイの問いにベディヴィアが答えた。ルーカンも頷く。
「他にも騎士達はいるが、かなり広い範囲のようだ。私達も二手に分かれた方がいいだろう。私とベディヴィア、ケイとアーサーで……」
「俺は嫌だぜ」
 順当な組み合わせを指示していくルーカンを、突然ケイが遮る。
 三人がこちらに顔を向けると、ケイは彼らに背を向けた。
「ケイ?」
 予期していなかったのか、少々目を見開いてルーカンはケイの名を呼ぶ。
 ケイは振り返ることなく、腕を組んでそっけなく答えた。
「こんなのろまと一緒にいられるか。お前らのどっちかとにしろよ。別に俺は一人でもいいけど」
「無理だ」
「なんだと!」
 ベディヴィアにキッパリ否定され、ケイは思わず振り返ってしまう。
 今にも噛みつかんばかりのケイと、全く無表情のベディヴィア。両者の間に火花が見える気がした。発しているのはケイだけであろうが。
 終わりそうもない、一方的な睨み合いを制したのは、間に入ったルーカンだった。
 両手を広げて二人の、というよりケイを宥める。
「まあまあ。じゃあ、アーサーは私と。君はベディヴィアと行ってくれ」
 それならいいだろうと目で問えば、ケイはふん、と鼻を鳴らして再び背を向けた。
「しょうがねぇな。それならいいぜ」
 とても納得しているとは思えない口調だったが、一応了承したらしい。ルーカンは安心して一息吐く。
 すると、アーサーが沈んだ表情でケイの方へ一歩足を踏み出すのが見えた。
 近づきたくても近づけない。そんな感じだ。
「兄上……」
 ケイは返事をしない。聞こえている筈なのに、ベディヴィアの時とは違って微動だにせず、その場に立っている。
 落ち込み項垂れるアーサーの肩に、ルーカンは軽く叩くように手を置いた。
 振り向いた彼に微笑みかける。
「行こうか、アーサー」
「……はい」
 一時の間を置いてアーサーは頷き、そのままルーカンと共に彼が指示する場所へと向かっていった。
 ケイはその姿を見ることもなく、自身も目的の場所へと歩き出すのだった。

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[ 2006/06/17 23:39 ] オリジナル小説連載 | TB(0) | CM(0)
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2006年5月16日開設

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