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Sir Kay~Brother Of King~・短編「騎士達の恋愛談義」

*こちらは「Sir Kay~Brother Of King~」の短編、三章終了後の騎士達のとある会話です。



「騎士達の恋愛談義」



 馬鹿馬鹿しい。
 ケイは酒を煽りながら、何度となくそう思った。
 細めた視線の先には、自分と同様に酒を煽り、自分とは正反対に盛り上がっている四人がいる。
 一番賑やかなガウェイン。それを隣で優雅に杯を傾けながら見守るランスロット。そして彼らの正面に座って微笑むルーカン。いつもの無表情なベディヴィアだ。
 最初にこの酒盛りを催したのは、ガウェインだった。アーサーが王となって約ひと月。戦は終わったが、騎士達は手に入れた平和を保つ為の公務に励み、全く休む暇もなかった。それでもここ最近はようやくログレスも落ち着きを取り戻したので、互いをねぎらうという名目の元集まろうではないか、と提案してきたのである。
 まず、ガウェインはランスロットに伝え、申し出を快く受けたランスロットがルーカンとベディヴィアに知らせ、最後にルーカンが自分のところへ回ってきたわけだ。
 ケイは正直、最初は断ろうと思っていた。元々そういった酒盛りはあまり好きではない。酒は嫌いではないが、多人数で飲むと、周りにいちいち気を配らなければならないのが非常に煩わしいと思っている。それなら一人飲んだ方が気楽でいい。
 それが何の気まぐれを起こしてしまったのか。今、自分は彼らと共に酒盛りを行っている。盛り上がる彼らを冷めた目で見つめてはいるが。
 これでも始まった当初は、それなりに楽しんでいたのだ。しかし、今はやはり断るべきだったと後悔している。原因は、もちろん目の前の四人だ。
 盛り上がっている事自体は、別に良い。問題は、今彼らがしている話の内容なのである。
「やはり、女性なら明るく元気があるのが良いな」
「ガウェインはそういった女性が好みなのか」
 さも楽しそうなガウェインとルーカンの会話が耳に入り、自然と眉間に皺が寄る。
 自分が参加したことに後悔した原因。それは、途中で始まった『お互いの理想の女性談義』のせいであった。何故なら、自分はこの手の話が大嫌いなのだ。
「ああ。逆に何を考えているのか分からないような女性は苦手だな」
「そうかい? 私は、むしろそういう女性の方が魅力を感じるね。何を思っているのか、明かしたくなる」
「そういうものか? 秘密がありそうな女性はとっつきにくくないか?」
 ルーカンの言葉にガウェインが肩を竦める。どうやら彼はミステリアスな感じの女性は苦手のようだ。だが、その理由は何となく理解出来る。彼の母や叔母を思い浮かべれば至極当然だろう。
「女性というのは、すべからく秘密を持っているものさ。だから、全ての女性は皆、個々の美しさを持てるのだよ。……うん、そう考えてみれば、私の好みの女性は、世の全ての女性ということになるのかもしれないな」
 一人で納得したルーカンをガウェインとランスロットは半ば苦笑気味で見ているのにため息を吐く。
 父親の血筋なのか。ルーカンは昔から女関係が派手だ。ただ、それは好色とか女好きであるからではない。この男を突き動かすのは、好奇心からだ。「知る」ということが大好きなこの男は、とにかくあるゆることに興味を示す。女関係もそれが理由だ。そこだけが父親とは異なる。彼曰く「女性は、人生最大の書物」だとか。ケイからしてみれば、全く持って意味不明な言葉だ。
「ランスロットは?」
「え?」
 突然話をふられ、当のランスロットが驚く。話題の矛先を変えてきたのは、ベディヴィアだった。あまりのタイミングの良さに、兄のフォローをするためか、それとも単に聞きたかったのか、判別がつかない。まあ、どちらでも良いことなのだが。
「おお、そうだ。ランスロット、お前はどういった女性が好みなのだ?」
「いや……私は、私を想ってくれるなら、どういった方でも……」
「それでも敢えて言うならこういった女性が良い、ぐらいのはあるだろう。せっかくの酒の席だ。教えてくれ」
 戸惑うランスロットをガウェインとルーカンが詰め寄る。誰がどのような好みなのかが、そんなに聞きたいものなのか。ケイからしてみれば、全く興味が持てない。
 二人に迫られたランスロットは観念したのか、小さい声ながらも答えた。
「……強い、方だろうか」
「強い?」
「己に誇りを持ち、凛としているという意味だ。そういう女性は、とても美しいと思う。そんな方の支えになれたら、これほどの喜びはない」
 そう答えたランスロットの瞳は、どこか遠くを見つめている風になっている。自身の理想の女性像でも思い浮かべているのだろうか。
 しかし、よくよく考えてみれば、彼が女性について語るのを見たのはこれが初めてだ。彼はその整った容姿と最強といえる強さ、正義感に溢れた性格、そしてエルフの里で育ったという特殊な生い立ちもあり、キャメロットに来てから瞬く間に憧憬の的となった。異性からはもちろんのこと、同性からも羨望の眼差しで見つめられている。女性の方から声をかけられることなど、日常茶飯事だ。けれど、当の彼はそれに応えたことは、自分の見た限りでは一度もない。必ず、何かしら理由をつけて断っていたから、色事には興味がないのか。もしくは騎士道には邪魔だと感じているのか。どちらにしろ、相当の堅物だと自分は思っていたのである。
 だから、今こうして恥じらいつつも好みの女性について語るとは考えてもみなかったので、少々驚いた。
 あと、彼の好みの女性について当てはまる人物がいることにも。
「なるほど。例えて言うならグィネヴィア様のような方か」
 ガウェインが心を読み取ったかのように、全くこちらが考えたのと同じ事を口にした。彼に心を読むなんて芸当が出来るわけないから、偶然であるが。彼も感づけたとは、よほど分かりやすかったということか。
 すると、ルーカンも便乗するように揶揄してきた。
「それはまたずいぶんと理想が高いな。グィネヴィア様ほどの方は、そうそういないだろう」
 その言葉にケイは複雑な気分になる。
 客観的に見れば、確かにグィネヴィアは素晴らしい方だ。女性よりもまだ少女と言ったほうが似合う年だが、二三年もすれば立派な貴婦人となることだろう。騎士が敬慕すべき王妃として申し分ない。
 尤も、それはあくまで客観的に見た上での話。主観的にいえば、ケイにとってグィネヴィアは苦手なタイプでしかない。ランスロットとは好みが合わないようだ。
 否、ランスロットだけでなく、誰とも自分と好みは合わないであろうことを、ケイ自身よく理解している。
「い、いや、私如きにグィネヴィア様のような女性など、恐れ多い」
「謙遜するな。けれど、君らしいよ」
「確かに」
 微かに頬を赤く染め、焦るランスロットをルーカンとベディヴィアが微笑ましく笑う。妙なところまで息の合った兄弟だ。
 からかわれたと思ったのか、少し憮然としたランスロットは、今度は自身から矛先を変えた。
「そういうベディヴィア卿はどうなのだ?」
「性別上、女であればいい」
「……懐が大きいな」
 あっさりとした即答にガウェインが感心するように頷く。そういうことではないだろう。果たして、いつまでこんな実りにならない話を続けるつもりなのだろうか。
 馬鹿馬鹿しい。非常に馬鹿馬鹿しい。
 気持ちを落ち着ける為に煽っていた筈の酒は、むしろより苛立ちを増幅させていっていたようだ。
「……くっだらねぇ」
 脳裏に浮かんだその言葉を、つぶやくように口にする。
 暖かい空気に包まれていた筈の室内が一気に凍り付くのを肌で感じ取った。
 顔を上げれば、四人が全員硬い表情になって、こちらに視線を投げかけているのが目に入る。それも想像していたとおりの光景だ。
「そ、そうだ。ケイはどうなのだ。どういった女性が好みだ?」
 気を取り直す為にガウェインが問いかけてくる。恐らく自分に話が振られないので不機嫌になっているとでも考えたのだろう。そんなわけがあるか。
 答えるのも煩わしいが、そうしなければガウェインのこと。こちらが答えるまで何度でも聞き返してくるだろう。その方がもっと煩わしい。それに、これは下らない会話を終わらせる良い機会になるとも考えられる。
 だから、思った通りに言った。
「俺の邪魔にならない女」
 冷たい空気がより寒さを増す。そうなることは予想していたが、構いはしない。これが自分の答えなのだから。
「……じゃ、邪魔とは?」
 戸惑い気味にガウェインがまた聞いてくるのに、溜息を吐きたくなった。そんなにこちらの好みが知りたいのか。知ったところで何の価値もないだろうに。まあ、意味が分からなかったからということなのだろうが。
 ちらりと横を見やれば、ルーカンがやれやれといった表情をしているのに気付く。この男は先程のこちらのつぶやきの意味を完璧に理解している筈。だが、そんな表情をするなら、最初からこの話題に乗らなければ良かったものを。
 やや音を立てて杯をテーブルに置いた。
「そのままの意味だよ。俺のやることに何も言わず何もせず、ただそこにいるだけの女がいいってことさ」
 これは全て本音だ。下らない会話を終わらせる為の方便ではない。ケイにとって女という生き物は永遠に理解出来ない存在だ。平気でワガママを言っては周囲を振り回し、己の思い通りにいかなければなりふり構わず、泣き喚く。どうしようもないほどの高慢きち。想像するだけでうんざりしてしまう。
 こんな風に考えるようになったきっかけは、苦い初恋を体験したからだ。今の自分の人格が形成された一端もそれが原因だったが、ここでそんなことまで話したくはない。
 すると、ガウェインが呆れた声で返してきた。
「そのような女性、いるわけがないだろう」
「いようがいまいが、どっちだっていいんだよ。そもそも、俺は女なんぞに浮かれる気は一切ない。女なんて面倒なだけだ」
 吐き捨てるように言うと、ガウェインの表情が険しくなる。今のは聞き捨てならなかったらしい。
「それでは俺達が浮かれていると言っているようではないか」
「違うのかよ。鼻の下伸ばしながら自分の理想の女語るなんて、浮かれている以外の何者でもねぇよ」
 意識的に口の端を上げ、嫌みな笑みを作る。それもまた気に入らなかったようで、ガウェインの表情は更に険しくなった。
 本当に鼻の下が伸びていたかどうかは定かではない。そこまで彼らの顔など見ていなかったし、興味もなかった。彼らとて、こちらが黙ったまま、ずっと観察していたということはないと分かっているだろう。仮に自分が彼らをずっと見ていたなら、確実に視線を感じ取っている筈なのだから。
 だのに、ガウェインは反応を示した。侮辱されたと思ったからかもしれないが、己が鼻の下を伸ばしていた可能性がゼロではなかったからだったのだろう。そこを指摘されたのが気に入らないのだ。本人に意識はないかもしれないが。
 すると、苛立ちの収まらないガウェインを一人抑え、彼の前に躍り出てきた。ランスロットだった。
「ケイ卿。騎士とは、貴婦人の為に生き、何かを為すことは、騎士道に通ずる。貴殿の言い分は、貴婦人を冒涜していることに繋がるのではないか。それは、騎士道に外れている行為だ」
 真摯な瞳でこちらを説き伏せてくる彼にケイは目を丸くする。ここで突然騎士道について語られるとは思っても見なかった。
 確かに騎士道では『貴婦人への献身』は徳目とされている。これを別名で『宮廷的愛』ともいう。騎士が貴婦人を崇拝し、奉仕を行うという意味だ。才がないとはいえ、ケイも騎士の家系に生まれた者。それぐらい知っている。そして、それを考えれば自分の先程の言葉はやや軽率ではあったのかもしれない。たとえ頭にあっても、口にすべきではなかったと思う。だから、ランスロットの言葉は、理解出来たし、納得も出来た。
 しかし、彼の言い分には決定的な間違いもあるのだ。
「騎士道がどうこうの話じゃねぇだろ。お前らの話していたことは、単にどんな女が好みかってだけのことで、騎士道における貴婦人への献身と恋情を一緒にするのは筋違いじゃねぇのか」
 『宮廷的愛』は肉体的な愛ではなく、精神的な結びつきが重要とされている。つまり、恋愛とは全く別次元の感情なのだ。だが、ランスロットの言い分は、その二つを同等のものとしてしまっている。それは騎士として、絶対に有り得てはいけないことなのだ。『宮廷的愛』を抱く相手の貴婦人は、時に他の男性の妻であることもあるから。
 そう指摘した次の瞬間、ランスロットの表情が強張った。思ってもみない反応に、ケイは訝しく覚える。何もそんなに衝撃を受ける必要はないではないか。それとも自分は気付かない内にとんでないことを口走っていたのだろうか。
 彼に問いかけることは出来なかった。これまで黙っていたルーカンが、間に割って入ってきたからである。
「まあまあ、これ以上はよそうじゃないか」
 パンパンと手を叩き、全員の意識を自身に向けさせる。全員の顔を見渡すと、今度はその手を、歩み寄ったこちらの肩に置いた。
「ケイにも昔色々あったんだ。勘弁してあげてくれ」
 何を言わんとしているのか、瞬時に理解する。この男は、全てを知っているのだ。自分のあの、苦い初恋のことも全て。それにあのことは、自分が初恋相手にしたことに対して、当時周囲でも問題視された。噂もかなり広まったらしい。だから、エルフの里で育ったランスロットはともかく、ガウェインはその噂を聞いた可能性が高いのだ。
 見てみれば思った通り、ガウェインは勘づいたようで、その顔からは怒りがすっかり鳴りを潜めていた。代わりに浮かんでいるのは、同情と哀れみ。
 急激に心が冷めていく。昔ならそんな風に見られれば、むしろ怒りや情けなさを感じ、決してそれを認めようとはしなかっただろう。自分が優れた人間でないことは自覚していたけれど、「可哀想だ」と思われるのは、絶対に嫌だったのだ。
 しかし、今は違う。あの日、アーサーの傍にいることを心に……亡き父に誓った日から、ケイは変わった。劣等感しかなかった自分のこの性格を、いっそのこと個性だと開き直り、たとえ蔑まれたり哀れまれても恥をかくことを恐れないと決意した。それがこのキャメロット、引いてはアーサーの役に立つと思ったから。
 だから、今こうしてガウェインに「初恋相手にこっぴどく振られて性格が歪んだのだな。可哀想に」と、口には出さないが明らかに顔に書いてあるぞといった目で見られても何ともない。それどころか、ひどく虚しくなってきた。何故、自分はこんなところでこんなことをしているのだろうか。
 馬鹿馬鹿しい、非常に。
 下らない会話が、ではなく。その下らない会話に腹を立てた自分が。
 それを悟られないよう、無表情で肩に置かれたルーカンの手を払いのける。テーブルの杯を乱暴に掴み、残りの酒を一気に煽った。
「もう寝るわ。これ以上女談義をするなら、俺がいると盛り下がるだろうからな」
 杯をテーブルへ置き、四人を一瞥してから背を向ける。その後は振り返らず、扉を開けて部屋を出た。
 出て行く自分を誰も止めはしなかった。それが正しいと、彼らも思ったからだろう。
 静かな廊下に扉の閉まる音が、やけに大きく響いた。



 幼少の頃、父に言われたことがあった。
 人が結ばれる相手は、生まれる前から決まっている。そしてその相手とは、生きていく中で必ず出会えることになっている。自分には妻がそうだったように。だから、お前もいつか出会うことが出来るだろう。
 この世で唯一人の相手と。
 ケイは、その父の言葉を常に心に秘めている。恋愛も女も面倒だとは思うが、それでもいつか自分もこの身体に流れる血脈を残す為に妻を娶らなければならない時が来るだろうということは理解しているつもりだ。その時、自分は出会えるだろうか。
 父が言ったように、自分にとってのこの世で唯一人の相手と。
 否、他でもない父からの言葉なのだ。きっと出会える。今はどこの誰かも分からずとも、いつか必ず。
 だから、それ以外の恋愛も女もいらない。唯一人でない相手以外との体験など、何の実りももたらさないのだ。
 しかも、大抵の恋愛というものは自分の身を滅ぼさせる。相手に心を奪われ、周囲が見えなくなる者も少なくないらしい。らしい、というのはケイ自身の恋愛経験が希薄の為、あくまで推測の域である。
 ケイからしてみれば、恋愛で身を滅ぼすなどという男は馬鹿でしかないが、そういった人間が騎士の中でいないとは限らない。そして、それがキャメロットの印象を悪くするきっかけになる可能性があるのだ。
 この先国を運営していく中で、そういった不祥事は、大きい障害になるだろう。宰相となり、アーサーを傍で支えていく身となったケイにとって、最早恋愛はそういったものでしかない。少なくとも、この世で唯一人の相手と出会うまでは。
 今頃、四人は先程の話を再開しているだろうか。それとも、別の話題に切り替えただろうか。
 どちらでもいいが、彼らが恋愛関係で不祥事を起こさないことを祈るばかりだ。
 自分がそうなることは、決してないのだから。



あとがき:
軽いタイトルにしては妙にシリアスになってしまいました。本当はコメディっぽくするつもりだったのに。難しいですね、コメディって(-_-;)。
この短編は、早い話ケイの恋愛観が如何にひん曲がっているかということを書きたかったわけです。果たしてこんな彼と恋愛なんかできる人はいるのか……。まあ、その辺は第二部の方で追々分かっていくかと。
ちなみに書いていて一番楽しかったのは、ルーカンの恋愛観です。書いておいて何ですが、「それはどうなん?」みたいな恋愛観ではありますけどね(^-^;)

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[ 2007/03/24 23:48 ] オリジナル小説短編 | TB(0) | CM(0)
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2006年5月16日開設

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