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Sir Kay~Brother Of King~第三章<6>




   第三章「弟の影となり」<6>



 エルフの里より参じたという剣士・ランスロットによって、アーサー達は谷を越えずとも、里へ行くことが可能となった。とはいえ、ランスロットの言葉を最初から皆信じたわけではない。里から来たというのも、本人が言っているだけのことであり、何の証拠もないからである。ケイでなくても疑心を抱くのは、当然の流れであった。
 しかし、その疑いは、すぐに晴れることとなる。
 ランスロットは、先ず一行をとある林へと案内した。そこは林ではあるものの、木が比較的多く、規模も大分大きい。林というよりは小さな森といったところか。
 アーサー達に取り囲まれるようにして前へ立つランスロットは、羽織ったローブの内側から一枚の葉を取り出し、腕を上げて掲げる。周囲はその様子を固唾を呑んで見守っていた。
 瞬間、葉から眩い光が発せられる。光はそのまま林を突き抜ける。そして、直線だった光は段々と広がりを見せて、最終的には人が通れる程の大きな穴となった。
 その光景に誰もが驚きを隠せない。
「光の道……。エルフが作れるという魔法の抜け道か」
 そうつぶやいたのはルーカンだった。彼が言うには、エルフ族は森に道を作ることができ、その道から遠くの森へと移動することが可能らしい。森でなくてもここのような多少規模の大きい林でも
 しかし、それは魔力の高いエルフ族だからこそ出来る秘術の筈。なら、人間であるこの青年が何故道を作ることが出来たのだろうか。
「この葉には、エルフの長の魔力が込められています。私はこの力をもって光の道を作り、参上したのです」
 まるでこちらの心の声が聞こえたかのように、振り向いたランスロットが答えた。確かに的を得てはいるが、それだけで彼がエルフの里から来たと結論づけて良いものか。ケイの中ではまだ信じ切れないでいた。
「私をお疑いするお気持ちは察しております。ですから、共にこの道を抜けるか、自らの力で里へ向かうか。ご自身で御判断下さい」
 アーサーを真っ直ぐに見つめ、ランスロットは言う。アーサーもまた、彼を見つめ返す。
 しばしの沈黙が流れた後、アーサーは口を開いた。
「……分かった。貴殿を信じよう」
 それがアーサーの結論であった。そして、王の判断は皆の判断ともなる。
 ケイはまだ疑いの余地はあると思っていたが、アーサーが信じるというなら最早何も言えない。
 こうして、一行は光の道を抜けることになった。
 すると、ランスロットはこう付け加えてきた。エルフ族は警戒心が強いため、今いる人数をすぐに里へ連れて行くことは出来ない。まずはアーサーと、その他護衛数人のみで行きたいという。
 人数を減らされることに一抹の不安がよぎるが、アーサーはそれを承諾し、足早に護衛を選ぶこととなる。
 その中で自ら立候補したのは、当然の如くガウェインであった。何の躊躇いもなく先輩騎士方を差し置くことが出来るのは度胸の良さか、それとも自己主張の強さ故か。ケイは呆れるのを通り越して感心してしまう。
 だが、ガウェインの同行が認められた後、出されたエクターの提案に愕然となった。父はルーカンとベディヴィア、そして自分にも護衛を務めるよう申し出たのだ。
 以前にもこんなことがあった。確かレオデグランス卿の元へ参じた時だったか。あの時も父は自分達にアーサーに同行せよと言ったのだった。若い自分達が、アーサーをこの先補佐していくことを自覚させるために。
 今回もそれが目的だというのだろうか。可能性はあるが、今回は行く場所が場所だ。実力のあるガウェインならともかく、自分が護衛役になるのは、自虐気味になるが頼りがないではないかと正直思う。
 とはいっても、他の二人はこれといって意見する気はないらしく、どうやら受諾するつもりだ。そんな中で、まさか自分だけ拒否することなど出来ない。したところで理由を求められたら、上手く説明するのは不可能だ。若い三人が行くのだから、もっと熟練した騎士の方が良いのではないか、では説得力がないし、自分では役に立たないなどと言えば、自分だけでなく父までも貶めるようなものである。
 結局周囲に流される形でケイも他の三人同様、護衛役にならざるを得なかった。
 準備を整えると、ランスロットを先頭に光の道へと歩み出す。足を踏み入れた瞬間、薄い膜の中に入っていくような、奇妙な感覚がした。
 光の道の中は、まるで別世界だ。ただ、どこまでも光だけが周囲を覆っている。道という名のようだが、それらしきものも見当たらず、本当に光だけが続いているのだ。その中をランスロットは何の躊躇いもなく、どんどんと進んでいく。五人は周囲に目を配らせながらも彼の後を追った。
 最初は、それは珍しいと思う光景であったが、半時ほど歩くと流石に慣れてしまい、ケイは段々と集中力が散漫となる。辺りには光しかないし、六人の足音だけが響き、他の音は何一つしてこない。出口らしきものも全く見えてこないことから、果たしてここから出ることが出来るのだろうか、と些か不安に駆られてしまう。まさか、やはりこの男に一杯食わされたのだろうか。
「ランスロット殿。ひとつ、聞いても構わないだろうか」
 ケイの頭の中で疑惑が再浮上してきた時、ルーカンが沈黙を破った。
「どうぞ」
 ランスロットは振り返らずに応える。
「エルフの里には、持ち主の傷を癒す魔法の鞘があるというのは、真の話か?」
 それはオークの襲撃を受ける前、ルーカンが言っていたエルフの噂だった。その鞘が、こちらの目的である二つの『宝』の一つに繋がることだから、確かに聞いておかなければならないのだが。
「……ええ」
 ランスロットのどこか言葉を濁すような返答に、ケイは眉を寄せる。
「パッとしない返事だな。もしかして、違うのか?」
「鞘はエルフの里にある。それは事実です」
 ある、と口にしてはいるものの何か引っ掛かる言い方だ。一体どういうことなのか。
 更に詰問しようとした時、ランスロットが足を止めた。慌ててこちらも立ち止まる。
「あの先が、エルフの里でございます」
 前方を指しながら、ランスロットが振り返る。
 四人は指された方向に目を向けた。すると、かなり奥の方、光の中に黒い斑点のようなものが見えている。あれが出口なのだろうか。
 こちらが気付いたのを確認したランスロットが再び歩き始めたので、五人も後を追う。
 近付いていく度に黒い斑点は大きくなっていく。それは、徐々に闇が光を呑み込んでいく形となり、最後にはあれだけ眩かった光は消え果て闇だけが残った。
 視界が暗闇に閉ざされる。周囲の景色どころか他の五人の姿も見えなくなってしまい、ケイは驚き、辺りを見回す。
 だが、それは一瞬のことであった。再び周囲が光に満ち、今度は眩しさに目が眩んでしまう。思わず目を瞑る。
 閉ざした視界の中、耳に入ってきたのは鳥の囀りだった。心なしか暖かい風が身体を通り抜けていく感触がする。眩しさに慣れながら、恐る恐る目を開いていく。
 まず最初に目に飛び込んできたのは、木や藁などで造られた建物だ。質素ながらも自然と一体化している姿からは、厳かな雰囲気を醸し出している。周囲にも同様の建物が並んでいるが、正面のものは他よりも大きく立派だ。
 次に見たのは、建物を囲む一面の森である。木の一本一本がとても大きく、だからといって圧迫感はない。むしろ神々しいとさえ思えてくる。まるで生きているかのようだ。自然に慣れた生き方をしてきたが、こんな森は今まで見たことがなかった。
 そして、ようやく理解が出来た。ここが、エルフの里なのだと。
 最後に自分が立っている場所に目を落とす。そこは大きな広場だった。視線を上げると、先程暗闇の中で見失った他の皆が、自分と同じように驚きながら周囲の光景に目を奪われている。
「ログレスは比較的自然に囲まれているが、やはりエルフ族の里はひと味違うな。木も草もイキイキとしていて私達を歓迎してくれているようだ」
 ルーカンが感嘆な声を上げる。その気持ちには同感だ。この景色には自然と溜息が漏れてしまう。
 そう、景色だけなら。
「……住人には全く歓迎されていないみたいだけどな」
 周囲を飛んでいる鳥や蝶の他にも所々から気配を感じていた。それは、この暖かな景色には似つかわしくない、鋭く敵意を露わにしている。
 ここがエルフの里であるならば、これらの視線の主は恐らく里の住人、エルフ達だろう。彼らの人間嫌いは有名だ。人間であるランスロットと共に暮らしているから、多少は態度が軟化されているのかと一抹の期待を抱いていたが、どうやら甘い考えだったらしい。
 ケイはエルフに会うのは初めてではなかった。交友関係があるというわけではないが、公務で二、三度顔を合わせたことがある。彼らも刺々しい態度ではあったものの、こちらの要求はある程度応じてくれていたし、会話もそれなりにスムーズだった。だから、それがエルフ全体の人間への態度なのかと思っていた。
 しかし、今なら分かる。彼らはまだ人間社会にある程度溶け込んでいた方だったのだ。故郷で一族のみと暮らすという、一種の閉鎖的な空間内で過ごしているここの住人達の冷たい視線こそが、エルフ特有の人間への態度なのだ。
 正直、自分は判断を誤ってしまったと思う。果たしてこのような状況でエルフの『宝』を拝借することは可能なのだろうか。一気に不安が心に満ちてくる。すると。
「ランスロット」
 女性の静かな声が聞こえてきて、前方へ視線を戻す。
 他より大きい建物から、美しいエルフの女性が後ろに女中らしき二人を引き連れて出てきた。彼女の姿を認めたランスロットが膝を付くのを見て、五人もそれに倣う。
「長。ただいま戻りました」
 その言葉にケイは目を見開いた。目の前の女性がエルフの長だという。確かにこれまで会ったことのあるエルフとは顔立ちも雰囲気も違うが。
 次第に周囲からゾロゾロと足音が近付いてくる気配がする。わずかに顔を横に向けて見やると、いくつもの足が見えた。彼女が現れたことが合図となったのか、隠れていた他の住人達が出てきたのだろう。
「こちらがキャメロットのアーサー王陛下です」
「お目にかかることが出来、恐悦至極に存じます」
「分かっています。あなた方がここへ来ることは、全て知っておりました」
 ランスロット、アーサー、エルフの長の順で会話が聞こえてくる。次に長が自分達に立ち上がり楽にするよう言った。寛大な処置に甘え、立ち上がる。
 それにしても自分達がここへ来ることも全て知っていたとは。
「エルフってのは随分と目がよろしいんだな」
 ぼそりとケイが思ったままにつぶやくと、ルーカンが肘で軽く小突いてきた。
「エルフ族には『魔法の鏡』が伝えられている。私達はそれでこの国の全てを見通すことが出来るのだ」
 突然近くにいたエルフの男が説明をしてきたことに驚く。ケイは本当に小さくつぶやいただけで、聞こえるとしたらせいぜい傍にいるルーカンとベディヴィアぐらいだと思っていたからだ。
 ちらりと見れば、発言してきた男は嫌悪の感情を剥き出しにしてこちらを睨みつけている。しかし、流石に容姿端麗が特徴のひとつであるエルフ族だ。そんな表情も非常に絵になっていた。
「全てを……。それは何とも便利な」
「もちろん、お前達人間のように下世話なことに使用したりはしない」
 男のあからさまな皮肉にケイは眉を寄せる。尤もそのように言われることは想定の範囲内であったが。
 エルフというのは大抵がこうなのだ。元々プライドが高いため、他種族を軽視するところがある。その中でも人間を始め、洞窟などで暮らしているドワーフをことさら嫌っているのだ。
 その上人間は、己の欲望のために争いを起こすことが多く、これまでも戦乱の火種によって数々の森を焼いてきた。そういった負い目があるせいか、人間はエルフから責められても文句を言わない者が多い。
 ケイは、それがあまり好きではなかった。過去の事を責められるのは、人間の歴史を考えれば仕方がない。嫌味を言われることは別に気にならないし、自分だけのことを悪く言われるのは良いのだ。しかし、自分の態度でそれが人間全ての態度だと思われることだけは何とも許し難い。男の今の言葉からはそれがひしひしと感じられたのである。
 だから、思わず今の状況を忘れて言ってしまった。
「わざわざそちらから言ってしまっては、逆に怪しまれますよ」
 視線は合わさず、最後にご注意なさってはと付け加える。
 男の頬がカッと赤く染まった。人間に忠告されたことでプライドを傷つけられたのかもしれない。口元からギリリ、と音が聞こえてきそうなほど葉を食いしばるのが視界の片隅に入った。
 今にもこちらへ突っ掛かってきそうな雰囲気になったところで、間にルーカンが割り込んできた。
「申し訳ありません。エルフの里に来るのは初めてなものでして、緊張しているのです。どうぞお見逃し下さい」
 いつものようにこちらの態度で腹を立てた相手を宥める役目を担う。頼んでもいないのに余計なことをすることだ、とケイは苛つく。だが、今回の相手はエルフ。人間のルーカンから言われても男の気分は簡単には晴れないようだ。
 すると、長も男の名を呼んで制してきたではないか。流石に長に言われてしまえば、彼もこれ以上は何も出来ない。男は渋々長に話の邪魔をしたことに頭を下げると、ケイを人睨みしてから後ろへ下がっていった。
 その間、ケイは全く意に介さなかった。他のエルフ達の冷たい視線や、ルーカン達の困った表情にも何のそのである。
 こちらで一悶着やっている間に会話は一通り済んだのか。長は自分達を前方の建物へと案内していく。どうやら、そこが長の住居のようだ。
 中は広い割には随分と殺風景だった。大広間であろう場所には必要最低限の家具のみが置かれているだけで美術品などの類はほとんどない。あるとすれば壁に不思議な模様のタペストリーが掛けられているぐらいである。エルフというのは、かなり質素な生活を好むようだ。欲がないといった方が正しいか。少し自室に似ている気がしてケイは若干親近感が湧いてきた。
 長は最奥にある安楽椅子へと腰掛ける。女中達はその周囲に立った。
「王者の剣エクスカリバーに選ばれし者アーサー。貴方の目的もこちらは存じております。我らエルフの『宝』を求めてきたのでしょう」
 話が突然本題に入った。回りくどい世間話を好まないのか、それとも早々と用件を終わらせて帰らせようとしているのか。
 エルフの長は固い表情を全く変えないため、感情が計りにくい。
「……はい。魔術師・マーリンの助言によれば、此度の戦に勝つには、二つの『宝』が必要だと」
 一瞬、返答に迷った風のアーサーだったが、正直に事実を述べた。懸命な判断である。『魔法の鏡』とやらでこちらの動向を探っていたのならば、何故ここに来たのかも知っていても不思議ではないだろう。ただでさえ人間であることで警戒されているのに、下手に嘘を付いて更に印象を悪くするのはこちらとしても不都合だ。尤も、アーサーは元々嘘偽りを好まない性格であるけれど。
 長はそうですか、と答えると言った。
「確かに、この里には『宝』があります。それは恐らく貴方達の力となるでしょう」
 その言葉にガウェインがアーサーの肩に手を掛けながら、喜びの声を上げた。アーサーもそれに応えている。だが、ケイは彼らのようにまだ素直に喜ぶことは出来ない。
 ここまでは順調といえば、順調だ。ランスロットの助力によって里に着く時間をかなり短縮出来た。また、彼が連れてきたからなのか、『魔法の鏡』で見ていたからなのかは分からないが、意外とあっさり長との謁見も叶った。当初の目的だった『宝』の存在も明らかになったのだ。正直、順調すぎるくらいである。
 こういう時は、必ず最後に落とし穴があるものだ。十七年という決して長くはない人生の中でケイはそれを嫌と言うほど味わってきた方である。このまま全てが上手くいく筈がない。
 そして、それは自分だけの杞憂ではなかったようだ。
「しかし、それを貴方に渡すわけにはいかないのです」
 アーサーにとっては予想外の、ケイにとっては半ば予測していた言葉にその場に緊張が走った。

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[ 2006/12/02 23:30 ] オリジナル小説連載 | TB(0) | CM(0)
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2006年5月16日開設

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